暇人に付き合ってる暇はないんだ。
授業中はそういった絡みはないが、昼休みとなるとやっぱり絡みがだるい。
「ガラガラ」
私は絡まれる前に教室の後ろのドアを開けて、誰もいない校舎裏の緊急階段を目指す。
そこは人通りが少ない上に校庭でキャーキャーと楽しそうに喚いている小学校低学年みたいなノリの人たちの声が聞こえないから私にとっては最高の場所だ。
この学校ではなぜか昼休みに校舎で過ごす人より、校庭にでて遊んでいる人の方が多い。
クラスでも、もちろん2グループぐらいは会話に花を咲かせているのだが、大体は大人しめな男子グループだ。
私は女だった。でもどうしてもあの女特有のキャーキャーと、鼓膜が破けるんじゃないだろうかというぐらい騒ぐ甲高い声が嫌いだ。
どこからあの声を出してるのか不思議に思うほどだ。
じゃあ、あの幼児がだすキャーキャーとした声は嫌いなのかと言ったらそんなに嫌いではない。
だって考えてもみてくれ幼児よりも体も筋力も声もでかい女子高生が全力でキャーキャー言うんだ、鼓膜が破けてもおかしくは無いし、頭が痛くなっても仕方がない。
校庭からの甲高い音が段々と小さくなって行った時、私は校舎裏の緊急階段にたどり着いた。
階段の三段目に座り、風呂敷の結び目をほどいてお弁当を膝の上に広げる。
階段の正面は女子高生一人分程の高さのブロック塀があり、その後ろには学校に隣接する誰のだかわからない家の壁がそびえている。
そう、景色は最悪なのだ。
階段に座った時、左側にはフェンスがある。フェンスの向こう側には公道があって歩行者からは丸見えだ。
しかし、公道を通るのは大体車だからあまり見られている感覚はないしこの場所を私の食堂にしてから2、3度ぐらいしか歩行者がこの公道を通ったのを見ていない。
たまにフェンスを抜けて吹く少し湿った冷たい風がとても気持ちいいこともあり、私のお気に入りの場所だ。
「キーンコーンカーンコーン」
昼休み終了5分前を告げるチャイムが鳴る頃には、お弁当は食べ終わっていた。
風呂敷に包んだお弁当を持ちながらまた教室まで歩き出す。
あと3限だ、それが終われば家に帰れる。
そんなことを思いながら机の上に少し角のよれた教科書とノートを準備する。
起立、礼、着席を済ませると眠たくなるような声で数学教師が喋りだした。