現在、クララちゃんのご両親は王都に住んでおり、クララちゃんはコンテスティ領に一人残っています。
 一人で寂しい思いをしている事を想像すると同い年の娘を持つ親として放っておけません。
 
 そこで、今からコンテスティ領に向かってもらい、クララちゃんとお友達になって貰おう大作戦を決行します!
 知らない人のフリをしてクララちゃんに接触してもらい、なんとかお友達になって下さい。
 幸いな事にクララちゃんの趣味はマルグリットちゃんと同じで読書だそうなので、一緒に本屋に通ったりして心も通わせてくれるとママはとっても嬉しいです。
 期限は特に指定しないので当分の間コンテスティ領に滞在してても大丈夫だよ。
 滞在に関する話はナナに伝えるようにしておきます。マルグリットちゃんは気にしなくて大丈夫だよ。
 
 一つ注意事項があります。クララちゃんの前で『魔力』に関する話は禁止事項とします。
 
 詳しい事はメリッサから聞いてください

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 何をいきなり無茶苦茶言ってるんだこの人……。
 
 しかも今から??? 
 
 唐突過ぎるよ、頭が痛くなってくる…… お母さまは思い付きだけで行動するタイプじゃないと思ったのになぁ……。
 
「ねぇ、メリッサ……」

「お嬢様の仰りたい事は重々承知ですが、紛れもなく奥様ご本人が書かれた手紙になります」

 どうやらメリッサですら知らなかったお母さまの一面があったらしい。
 
 きっと家族にすら隠していた一面なのだろう、メリッサは頭が痛そうな表情をしている。
 
「分かったわ、次の質問ね。知らない人のフリって何でなの?」

「マルガレーテ様経由での依頼である事がクララ様に知られると、精神的に負担を与える可能性があるのではないかと言われています」

「それって母親本人が来ないにも関わらず、代理の人間を送って様子見だけしてほしいって暗に直接は会いたくないって言ってるようなものだからかしら?」

 ん? 待って? 直接会いたくないってなんでだろう? そもそも何で王都と領で家族が別々に暮らしてるんだろう?
 
「ねぇ、メリッサ。そもそもクララ嬢とご両親が別々に暮らしてる理由って何なのかしら?」

「はい、それが手紙に記載されている『魔力に関する話は禁止事項』に関連します」