結衣莉の笑顔が映った。その三秒後、眩しい光を感じて目を開ける。
……夢を見ていた。結衣莉との幸せな「思い出」を遠くから見ているみたいだった。もうあの日には戻れないっていうのに。
俺は唯一家から持ってきていた形となる思い出の欠片を取り出す。それは一冊のアルバムだった。
一ページ、めくるとそこにはさっき見たばかりの君の幸せを感じさせるような笑顔があった。
会いたい、もう一度。会って、本当のことを言わなくちゃ。そうは思うけど、結衣莉にはもう会えないから。
辛いのは結衣莉だけじゃない。俺だって、あれから何回も何回も涙を流した。なんであんな終わり方をしたんだろうって。
でも、こうしたのは結衣莉の幸せを不器用だけど願った結果だから。結衣莉には俺の事なんて忘れて幸せに生きてほしい。
だから、俺だけがずっと彼女のことを覚えていてもしょうがない。俺はアルバムに一つだけ、涙の染みを作った。
きっとこれで涙を流すのは最後だ。
ありがとう―—。さよなら。
俺はさっき取り出した思い出の欠片を棚の中にしまった―—。