山頂に着く頃には俺は汗だくだった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
一方で有里姉ちゃんはというと俺より先に登って行ったのにも関わらず少しも息を切らしていない。
「優くんもまだまだだね!!」
有里姉ちゃんの足の速さは健在だった。
「相変わらず早いな~。今なら勝てると思ったんだけど」
「ちっ、ちっ、ちっ 甘いぜ後輩!! 優くんも速くなったように私も速くなっているのだよ?」
「どうやらそうらしい。完敗だ~~!」
「ふっふっふっ!!」
どうやら凛津とは違って有里姉ちゃんはあの頃とあまり変わっていないようだった。
そのまま2人で山頂にある木のベンチに腰をかけて他愛もない話をした。
高校では何部に入っているか、休日は何をして遊ぶのか、今でも好きな食べ物は変わっていないのかとか。
そんな質問をお互いしていた時突然緊張した声色で
「じゃあ、次の質問。優くんに今彼女はいる……?」
と有里姉ちゃんが聞いてきた。
「えっ!彼女? いないよそんなの! 俺全然モテないし……そういう有里姉ちゃんは彼氏とかいるの?」
「いないよ……。でもね、ずっと好きな人はいるよ?私、その人の側にいる時はね、その気持ちには気づかなかったんだ。でも……その人と離れてから、初めてこの気持ちに気づいたんだ」
有里姉ちゃんはさっきまでの元気な振る舞いとは打って変わって、顔を俯けて話している。
「そっ、そうなんだ……」
俺は今、自分の初恋相手の好きな人について聞かされている。
とても複雑な気分だった。
「あっ、あのねっ!!」
「!?」
有里姉ちゃんの声が俺の耳のすぐ側から聞こえてきてビクッとしてしまう。
「あの……ね」
「うん」
俺は平静を装って有里姉ちゃんの話を聞く。
「私の好きな人……知りたい?」
顔を真っ赤にした有里姉ちゃんが俺のすぐ側にいる。
ごくっ。
「おっ、俺の知ってる人なの?」
こくん こくん
「でもさっ、俺なんかに教えていいの?」
こくん
知りたい!! 正直めっちゃ知りたいけど……
これを聞いてしまったら、有里姉ちゃんへの俺の初恋が終わってしまうような気がして……。
「っ!」
そんな俺の葛藤もつゆ知らず、有里姉ちゃんは真っ赤な顔で俺を見ている。
ああっ~もう!!
こんなん聞かない訳にはいかんだろ!!
俺は決意を固めて口を開く。
「知りたい!! 有里姉ちゃんの……すちな人っ!!」
噛んでしまった。
恥ずかしい……!
それでも知りたいと言ったからには聞かないと!!
俺は有里姉ちゃんのいる方を向く。
すると、有里姉ちゃんは…………笑っていた。
すごい笑っていた。
せっかく意を決して聞いたってのに!
俺が少ししょげていると
「ごめんごめん!!」
笑いすぎて涙目になった有里姉ちゃんがこちらを見ていた。
「もういいよ! で、有里姉ちゃんの好きな人って?」
「うーん。今日はやっぱりやめとく。なんかまだいいかなって」
何がまだいいかなってだよ!
俺はあんなに勇気を出して聞いたってのに!
でも、まぁこれで良かった……のか?
「………じゃあさ、この島に俺がいる間に教えてよ」
「うん!! わかった!」
そんなこんなで有里姉ちゃんとの山登りを終えた俺は、一人でおばあちゃん家へ帰っていた。
有里姉ちゃんの家も、うちの近所だったので良かったら一緒に帰ろうと思っていたのだが……
「あ~。ごめんね。今日この後大事な話があるんだ」 と言って山の入り口の前で別れたのだった。
家に着く頃にはすっかりと日も沈んでいた。
ぐ〜〜〜っ
「腹減った〜〜。そういえば、山登りして、有里姉ちゃんと長い間、話してたから昼飯食うの忘れてたな」
腹が減って仕方がないので少しでも早く家に帰ろう!!
俺は少し小走りで家へと向かった。
この時の俺は、これから起こる事など知る由もなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
一方で有里姉ちゃんはというと俺より先に登って行ったのにも関わらず少しも息を切らしていない。
「優くんもまだまだだね!!」
有里姉ちゃんの足の速さは健在だった。
「相変わらず早いな~。今なら勝てると思ったんだけど」
「ちっ、ちっ、ちっ 甘いぜ後輩!! 優くんも速くなったように私も速くなっているのだよ?」
「どうやらそうらしい。完敗だ~~!」
「ふっふっふっ!!」
どうやら凛津とは違って有里姉ちゃんはあの頃とあまり変わっていないようだった。
そのまま2人で山頂にある木のベンチに腰をかけて他愛もない話をした。
高校では何部に入っているか、休日は何をして遊ぶのか、今でも好きな食べ物は変わっていないのかとか。
そんな質問をお互いしていた時突然緊張した声色で
「じゃあ、次の質問。優くんに今彼女はいる……?」
と有里姉ちゃんが聞いてきた。
「えっ!彼女? いないよそんなの! 俺全然モテないし……そういう有里姉ちゃんは彼氏とかいるの?」
「いないよ……。でもね、ずっと好きな人はいるよ?私、その人の側にいる時はね、その気持ちには気づかなかったんだ。でも……その人と離れてから、初めてこの気持ちに気づいたんだ」
有里姉ちゃんはさっきまでの元気な振る舞いとは打って変わって、顔を俯けて話している。
「そっ、そうなんだ……」
俺は今、自分の初恋相手の好きな人について聞かされている。
とても複雑な気分だった。
「あっ、あのねっ!!」
「!?」
有里姉ちゃんの声が俺の耳のすぐ側から聞こえてきてビクッとしてしまう。
「あの……ね」
「うん」
俺は平静を装って有里姉ちゃんの話を聞く。
「私の好きな人……知りたい?」
顔を真っ赤にした有里姉ちゃんが俺のすぐ側にいる。
ごくっ。
「おっ、俺の知ってる人なの?」
こくん こくん
「でもさっ、俺なんかに教えていいの?」
こくん
知りたい!! 正直めっちゃ知りたいけど……
これを聞いてしまったら、有里姉ちゃんへの俺の初恋が終わってしまうような気がして……。
「っ!」
そんな俺の葛藤もつゆ知らず、有里姉ちゃんは真っ赤な顔で俺を見ている。
ああっ~もう!!
こんなん聞かない訳にはいかんだろ!!
俺は決意を固めて口を開く。
「知りたい!! 有里姉ちゃんの……すちな人っ!!」
噛んでしまった。
恥ずかしい……!
それでも知りたいと言ったからには聞かないと!!
俺は有里姉ちゃんのいる方を向く。
すると、有里姉ちゃんは…………笑っていた。
すごい笑っていた。
せっかく意を決して聞いたってのに!
俺が少ししょげていると
「ごめんごめん!!」
笑いすぎて涙目になった有里姉ちゃんがこちらを見ていた。
「もういいよ! で、有里姉ちゃんの好きな人って?」
「うーん。今日はやっぱりやめとく。なんかまだいいかなって」
何がまだいいかなってだよ!
俺はあんなに勇気を出して聞いたってのに!
でも、まぁこれで良かった……のか?
「………じゃあさ、この島に俺がいる間に教えてよ」
「うん!! わかった!」
そんなこんなで有里姉ちゃんとの山登りを終えた俺は、一人でおばあちゃん家へ帰っていた。
有里姉ちゃんの家も、うちの近所だったので良かったら一緒に帰ろうと思っていたのだが……
「あ~。ごめんね。今日この後大事な話があるんだ」 と言って山の入り口の前で別れたのだった。
家に着く頃にはすっかりと日も沈んでいた。
ぐ〜〜〜っ
「腹減った〜〜。そういえば、山登りして、有里姉ちゃんと長い間、話してたから昼飯食うの忘れてたな」
腹が減って仕方がないので少しでも早く家に帰ろう!!
俺は少し小走りで家へと向かった。
この時の俺は、これから起こる事など知る由もなかった。