「はいはい。自分で解決できるよう頑張りますよ。」
『あ、そう。頑張ってね。』
                      *
「おいおいおいおいおいおいおいおいおい。なんで隠キャがいるんだよ〜死んだと思ったのに。いや死ねよ」
「他の人が死ねだか消えろだとか言う権利など一切ございません。自殺教唆罪で訴えられたいのですか」
わざわざ語尾に〈ですか〉などの敬語を使うには理由がある。それは相手を怯ませられるから。予想通り陽キャは少し怯んでいた。
「邪魔。どけよ。」
そのまま怯んだ陽キャはどこかに去っていった。
「大丈夫?甲斐君、いつもいじられてるけど」
その声の主は隣の席の宮村聡だった。いつも陰にいるような存在、身長も低くウサギのようなやつなので、もちろん隠キャだった。
「大丈夫、いつも言われてるから。もう慣れたよ。お気遣いありがとう」
「ほんとに?顔色悪いけど。」
「だから大丈夫だよ。気にしないでいいよ」
少し嬉しかった。正直僕を気遣ってくれた人なんて数えられるほどしかいなかったから、、、

3
少しずつ気温が上がってきた7月、梅雨が終わり虚しくなってきた。
ああ一年の中で一番好きな時期が終わった。次は地獄の夏か。
つまらなすぎる教師の授業を聞きたいわけでもないので頬杖をつきながら窓の外に広がる景色をぼんやり見ていた。この島独自の海、そしてそれに牙を剝いているようなリアス海岸。そこに点在する住宅。
あの海に飛び込みたいと思ったあの日を思い出し、少し目が潤んだ。
「どしたの?ボーッとしちゃって。なんかあった?」
「ん。、、いやなんでもないよ。なんかしてた?」
「うん。かなりボーッとしてて今にも折れそうだったよ」
「マジで。これからは気をつけよ」
本当にボーッとしていたのか四時限目のチャイムが鳴り授業が終わったこと・空腹だったことを気づいていなかった。
「一緒にお弁当食べない?僕、いっつも1人で食べてるしさ、一回は誰かと食べたいなって思って」
申し訳なさげに宮村が誘ってきた。
俺も彼と同じような隠キャ(←一応自覚はしている)だったのでいつも1人食べていた。
「いいよ。俺もいつも一人だったし、食べよ」