このまま母が好き勝手やっていたら、この国から聖女はいなくなる。



 母の振る舞いしか見ていないカタリナは、きっと、母のように振る舞ってもよいと考え、聖女になっても自分の欲望のままに振る舞うことであろう。



 私がロザリーから聞いた限りでは、どうやら聖女に対する悪評が出てきたのは、母がカタリナを連れて来た頃と一致する。



 母は今の状況に気がついているのだろうか?



 聖女の権力は絶大だから、周りが、国民が何を言おうとも、上から押さえつければどうにかなると思っているのかも知れない。









 私は父の実家のことを考えていた。



 父は自分の意思で逃げたが、実質的には私のように追放されたも同然だ。



 父の実家にしてみれば、父に非はないのに、家名を貶められのだ。さぞかし腹に据えかねていることだろう。



 それなりにこの国を引っ張ってきたという自負のある名門一族が、このまま黙っているとは到底思えない。それがたとえ聖女相手だったとしても、だ。









 私が追放されてから数か月が過ぎようとしていた。



 生まれてこの方、肉体労働などしたことはなく、やっていけるか不安であったが、驚くべきことに、この短期間ですっかり慣れてしまった。



 確かに肉体的には辛い仕事であったが、日々の生活自体は平穏であった。



 この先もこの生活が続くのかと思っていた矢先だった。



 私はメアリから驚くべき話を聞かされた。