給料日後の休日、私たち住み込みの使用人は、買い物のため、みんなで町にやってきた。



 この買い物が、使用人たちの唯一の楽しみとなっている。



 町に着いてからは自由に行動することができる。好きな店に行って、商品を物色したり、市場でおいしい物を腹いっぱい食べる……といった感じで、思い思いに休日を楽しむ。



 私は、この町に来るのが初めてということもあり、ロザリーという同じ年頃の使用人と一緒に行動することになった。









 私は本屋の前で立ち止まり、軒先に出ている本を手に取った。



「あんた、本なんて読めるの?」



「え? ……あなたは読まないの?」



 私には、ロザリーの問いかけが奇妙に聞こえた。そして、その理由はすぐに判明した。



「そもそも字が読めないんだから、本なんて読めるわけないじゃない! あんたこそ、どこで読み書きを習ったの?」



 私は、しばし言葉を失ってしまった。この国に、読み書きができない人がいるとは知らなかった。



「学校には行かなかったの?」



 以前、公務で学校の視察に行ったことを思い出した。



「学校? そんなの金持ち連中しか行かないよ。ああ、そうか。あんた、メアリさんと一緒に聖女様のところで働いていたんだっけ。そこで習ったの?」



「え、ええ。実はそうなの」



 答えに困る質問であったが、ロザリーが勝手に答えを出してくれて助かった。



「ふうん……。で、聖女様ってどんな人だった?」



 ロザリーは、またしても答えにくい質問を投げかけてきた。