体を強打した痛みに必死に耐えている男性に、私は、



「大丈夫……?」



 と声をかけた。



 見ると、落下するときに木の枝に引っ掛けたのであろう、肌が露出している部分にはたくさんの引っ掻き傷ができていた。



「ちょっと待ってて。薬を持ってくるわ」









 木の上から落ちてきた男性は、アベルと名乗った。



 見かけない顔だと思っていたら、やはり、カタリナの父と一緒に来た一団の一人で、カタリナの従兄にあたる人物だそうだ。



「あんたがカタリナの姉さん?」



 アベルはかなり図々しい人間のようで、初対面にも関わらず、聞いてもいないのに自分の話をしたり、私に質問を浴びせてきた。



 アベルが話し続けている間、私は周りが気になって仕方がなかった。



 メアリの一件で、私に関わった人間は、不利益を被ることがわかった。だから、私と一緒にいるところを見られたら、アベルもどんな目に遭うかわからない。



「私はこれからやらなきゃいけないことがあるの。あなたも早く帰って。そして、ここにはもう来ない方がいいわ」



 私はアベルを追い返した。









 昨日、『来るな』と言って追い返したのに、アベルはまた離れにやって来た――余程気に入ったのか、懲りもせず例の木に登っていたのだが。