「そっかあ……大変だったな。俺が海幻の立場だったら確実にグレてるわ」

「暗い話してごめん」

「全然。海幻は妹想いの良い姉ちゃんだな。で、撮った写真はどうすんの?」


切り替えが早い!

重苦しい空気を作ってしまったことを申し訳ないと思っていたけれど、成瀬くんにはそんな必要はなかったみたい。

変にプライベートなことを聞いてしまったような気まずさを出すこともなく、かと言って聞き流した訳でもなく、私の話を呑み込んだ上で次の話に進めてくれたような。そんな気がした。

空を見上げて、少しだけブランコを漕ぐ。

こんなにも自分のことを人に話したのはいつぶりだろう。


「写真はデッサンの練習用なんだ」

「へえ。いつも教室で何してんのかなと思ってたんだけど、絵を描いてたんだ」


いつも一人でいたのは、絵を描いていたから。

別にコミュ障とかじゃなくて、ただ人間関係が面倒なだけ。

さすがに話しかけてくれる人を無視するわけにはいかないからそれなりには話すけど、正直最近はそれさえも面倒に思っていた。

そこで考えたのが、絵を描く事だった。

私は特に理由もなく、机の上にある自分の筆箱や消しゴムをノートの切れ端にデッサンを始めた。私が真剣な表情で描いていると、ほとんどの人はそれを察してくれるのか、話しかけられる頻度は極端に減る。

そんな理由から始めたデッサンも、描いているうちにどんどんのめり込んでいった。