私はこの街に引っ越してきてから、一人でいることを選ぶようになった。

両親が突然離婚の話を私達に切り出し始めたのは、中学三年生になってすぐのこと。今までお父さんとお母さんの仲が悪いようには見えなかったから、まさかこんなことになるなんて思ってもみなかった。

私と妹の柚(ゆず)の前では仲睦まじい夫婦を演じていたんだ。そう思ったら、私達はずっと騙されていたのだろうか、と考えるようになってしまった。

納得できない私は、離婚の理由を何度もお母さんに訊いたけれど、理由は決して教えてくれなかった。これは大人の問題で、私達子供には関係ないと言われているようだった。

私は何度も何度もお母さんに躱されているうちに、私は半ばやけになって、両親とは一切口を聞かなくなった。


中学卒業と同時に、私は柚とお母さんの実家で暮らすようになった。

おばあちゃんの家で暮らすのは嫌じゃなかったけれど、それまで慣れ親しんだ地元を離れること、友達と離れること、そして大好きだったお父さんと離れることは、やっぱり辛かった。

次々に湧き上がる感情は、私の中で処理しきれずにどんどん溜まっていく。

初めのうちはこの街に来ても友達と連絡を取り合っていた。けれど会えない友達と連絡を取りあっているうちに、段々と共通の話題がなくなり、メッセージを送る頻度は極端に減っていった。

次第にグループLINEの中ではメッセージをただ読むだけになり、最終的に虚しくなって自然とフェードアウトしていった。あんなにも仲が良かったのに。

繋がりを切るのなんて、簡単だ。

だったら最初から関わらなければいい。

友達なんて作らなければ良い。

いつからか、そう思うようになった。


そして高校に入学して間もなく、お父さんが亡くなった知らせを受けた。


お母さんに理由を訊いたら、また教えてくれなかった。それにお母さんは露骨に嫌な顔をしていたから、これ以上問い詰めることはしなかった。

だから私は部屋で一人で泣いた。

まだそのことを知らされていない柚には本当のことが言えなくて、結局私もお母さんと同じようにはぐらかした。