朝、渡り廊下で会ってから薄々気が付いていた。けれど、怖くて避けていた。もうすぐ私は成瀬くんの姿が見えなくなる。
「海幻、上映時間大丈夫か?」
「まだ大丈夫。先に下書きだけでもさせて」
スケッチブックと色鉛筆を取りにカフェになっていた教室へと戻ると、壁には私が描いた絵をいくつか貼ってくれていた。
私達はいつもの階段へと急ぐ。
どこを背景にしてもよかったけれど、やっぱりいつも一緒にいた階段を背景に描きたかった。
陽の光が当たりやすい踊り場に立ってもらうと、私は踊り場から続く階段をいくつか登ったところに座る。背後には立ち入り禁止と書かれたテープが貼られた屋上へと続く扉がある。
目を凝らしてほとんど透明になった成瀬くんを何度も目に焼き付け、それをスケッチブックに写していく。人の絵を描くのは得意じゃなかったから、何度も消しゴムで消しては書き直す。
そして背景は、ちょっと明るく塗り替える。埃っぽいこの階段からの景色も、絵だったら自由な色にすることができる。
しばらくすると、ポケットに入れていたスマホのアラームが鳴った。時間切れだ。
「ごめん、もう行かないと」
「俺も一緒に行っていい?」
「もちろん。一緒に行こ」
編集されたものとはいえ、これから自分の描いたイラストをみんなの前で発表するという一大イベントなのに、不思議と緊張することはなかった。
「海幻、上映時間大丈夫か?」
「まだ大丈夫。先に下書きだけでもさせて」
スケッチブックと色鉛筆を取りにカフェになっていた教室へと戻ると、壁には私が描いた絵をいくつか貼ってくれていた。
私達はいつもの階段へと急ぐ。
どこを背景にしてもよかったけれど、やっぱりいつも一緒にいた階段を背景に描きたかった。
陽の光が当たりやすい踊り場に立ってもらうと、私は踊り場から続く階段をいくつか登ったところに座る。背後には立ち入り禁止と書かれたテープが貼られた屋上へと続く扉がある。
目を凝らしてほとんど透明になった成瀬くんを何度も目に焼き付け、それをスケッチブックに写していく。人の絵を描くのは得意じゃなかったから、何度も消しゴムで消しては書き直す。
そして背景は、ちょっと明るく塗り替える。埃っぽいこの階段からの景色も、絵だったら自由な色にすることができる。
しばらくすると、ポケットに入れていたスマホのアラームが鳴った。時間切れだ。
「ごめん、もう行かないと」
「俺も一緒に行っていい?」
「もちろん。一緒に行こ」
編集されたものとはいえ、これから自分の描いたイラストをみんなの前で発表するという一大イベントなのに、不思議と緊張することはなかった。