展示物を観ると言っても、実際のところうちの学校は模擬店やアトラクションをしているクラスの方が多いみたいで、一時間もしないうちに回り終えてしまった。

それでも普段は絶対に入ることなんてない上級生のクラスに入れるのはちょっと新鮮だったし、二年生の教室に展示していた動物園のジオラマや美術部の手書きのトリックアートは、目を見張るほど緻密で圧倒された。

中庭には模擬店がたくさん出揃っていたけれど、食べることができない成瀬くんの目の前で自分だけ美味しそうに頬張る姿を見せるのもどうかと思う。フライドポテトをお供物のように置いておくのもなんか違うし。


「海幻、やっぱりお化け屋敷行こうぜ」

「うーん、そんなに言うなら」

「まじか!やった!」


冷静に考えて私一人で回っている状態はちょっとやだなと思っていたけれど、ほかに行くところがなくなってしまったし。次第に成瀬くんの高めのテンションがうつってしまって、少しだけ見てみようという気持ちになった。


「いらっしゃいませ。って、山野さん?」

「ど、どうも」

「山野さんが一人でお化け屋敷に来るなんて、ちょっと意外ね」


屋敷の受付をしている内海さんがメガネをくいっとあげ、まじまじと私の顔を見つめるから、あははと笑って誤魔化しておく。隣にはもう一人いるんだけどね。

三組が作ったお化け屋敷は、教室全体を使った巨大迷路のようになっている。

黒く塗られた段ボールで仕切られた迷路の内部を進むと、本格的なゾンビのコスプレをした人が曲がり角の途中から出てきたり、後ろから追いかけてきたりと忙しい。

おまけに奇声を発しながらいきなり飛び出してくるのは、さすがに勘弁して欲しかった。

でも、一緒に入った成瀬くんも意外と本気で怖がっているのを見て、失礼だけどやっぱり来て良かったと思った。


「あー、怖かった」

「成瀬くん、幽霊なのに怖かったの?」


ちょっとおかしくなって意地悪気味に聞いてみると、成瀬くんは腕を組みながら「お化け屋敷は人を脅かせるように計算されたものだから」と力説していた。