そういえば、香代ちゃん達に自分から休ませてほしいって言ったのは、今日が初めてかもしれない。


香代ちゃんから好きなところで作業できるようにって、タブレットとノートパソコンを貸してもらっていたのだけれど、なんとなく一緒に行動しておいた方が良い気がして、体裁的に部室で作業をしていたこともあった。

今思うと、そんな必要なんてなかったのかもしれない。

そう思うと、心のどこかで遠慮がちな気持ちが吹っ切れたような気がした。


「ねえ、成瀬くんは本当に自殺をしたの?」


決して重すぎないよう、ふと思い出したように訊いてみる。


「誰かに俺の話訊いた?」


成瀬くんは怒ってはいないけど、戸惑ったような顔をしている。


「ごめん。ちょっと気になって、先生に訊いちゃった」

「別にいいけど、なんか言ってた?」

「自殺じゃなくて事故だって」

「ああ、うん。そうだよ」

「詳しく訊いちゃだめかな」

「……俺の話なんて訊いてもしょうがないぞ」

「しょうがなくないよ。私は知りたい」


成瀬くんはしばらく考えてから「そんなに格好良い話じゃないけど」と苦笑いをして、静かに口を開いた。


「気になる子がいじめられていてさ、助けようとしてたんだ」