どうすれば、一人ぼっちの成瀬くんを助けてあげられるのだろう。

なんとかしてあげたい。そう思ってしまった。

私なんかが。


「そろそろ日が暮れてきたから、帰るとするか」

「あ、うん。そうだね」

「そろそろ行くわ!じゃあな、俺みたいに死ぬなよ!」


成瀬くんはそう言って、揺れていないブランコから軽快に飛び降り、すうっと透明になっていく。

このまま消えてしまえば、もう二度と会えない気がした。


「成瀬くん……!また会える?」


成瀬くんは少し驚いてから、すぐにはにかんだ表情を作り直して言った。


「普段は校内をふらついてるから、視えれば会えるよ」

「見つけたら声をかけてもいい?」


成瀬くんはしばらく考えてから、またにこりと私に笑顔を向ける。


「良いけど、気をつけろよ」

「ど、どうして?」

「周りの人からは海幻がいきなり一人で話し始めたように見えるからドン引きされるぞ」


ぶはっと吹き出した成瀬くんは再び私に手を振ると、周りの景色に溶け込むように消えてしまった。

去り際に置いた言葉が「またな」に変わっていて、私はほっと胸を撫で下ろす。

さっきまでの出来事は幻だったのかと思ったけれど、私の膝の上には助けた子猫がちゃんといる。

この子も私も、成瀬くんに助けられちゃったな。


「もうちょっとだけ頑張ってみようかな」


気づくとそんな前向きな言葉をことを呟いていた。

この子の面倒を見たいし、成瀬くんのことも、もっと知りたい。


「うち、来る?」


そう囁くと、私の腕の中にいるこの子はみゃーと鳴き、私の右手をペロリと舐めた。