神修の授業は座学だけでは無い。

一日六コマの授業が一週間あるうちの、七割が座学で残り三割は実技や演習系の授業だ。

これが私の中ではいちばん嫌いな時間で、その中でも「詞表現実習」は一番避けたいものだった。


座学のひとつ「詞表現《《演習》》」とセットになっており、演習の授業で習った祝詞を「詞表現《《実習》》」では実際に奏上して、用意された模擬の穢れや呪を祓う実践形式の授業だ。


どちらの科目も担当教員は薫先生で、少しは気持ちも楽だと思ったのは最初の五分で砕け散った。



初日の授業、詞表現演習が終わって詞表現実習の授業が行われる白砂が敷き詰められた会場にやって来た。

一番最初に習ったのは、「火鎮祝詞《ひしずめののりと》」というもので、火事を鎮火するための祝詞のように思えるけれど、実際は火事が起こる前に唱える祝詞で、旧暦の6月と12月の晦日に行う神事「鎮火祭《ひしずめまつり》」の際に奏上するんだとか。


けれど、言霊の力をのせれば名前の通り火を鎮める効力が発揮され、妖がその霊力を使って付けた怪火《あやしび》を鎮めるのにも効果的がある。



そして「詞表現演習」で祝詞の意味を習った私たちは、これから後半の「詞表現実習」で実際に模擬の怪火を使用して鎮火を実践するのだ。