あの日、僕は一人教室に残り黒板に女性の絵を描いていた。
何も考えず、只々黙々と。
僕はクラスの中でも、幽霊的存在で、誰も僕に見向きなんかしない。そんな僕の唯一の癒やしは、教室に最後まで残り、今のように絵を描くことだった。
「 素敵だね、その絵。 」
静かな教室に透き通った声が響いたと思えば、僕の隣に一人の女子が。
「 そうか?俺にとってはなんともないが、 」
「 そんなことないよ、
私、君の絵が好き 」
「 勉強にしか使わないと思っていた黒板が、魔法をかけたかのように、素敵になっているんだもの。凄いと思わない? 」
ワクワクした口調で話す君は、見た目のような大人っぽさと違う、高校2年生の年相応の女子に見えた。
「 君、名前は? 」
「 夜風 奏音、。 」
「 きれいな名前、 」
「 そうか?君の名前は? 」
「 ふふっ、それはまた今度教えるね? 」
「 なんだよ、それ(笑) 」
「 あ、笑った! 」
「 そんなに、変か? 」
「 そんなことないよ。素敵な笑顔だよ 」
そう言う君の笑顔は太陽のように明るかった。