(3)
 ちょうど一周一キロメートルの外周を歩き終え、校門を通り抜ける。
 するとすぐに、アスファルトに横たわる少女が視界に入った。彼女はゆっくりとした動作で、手を高くつきあげる。指の隙間から何かを眺めているようにも見えた。
 直上した手をゆっくりと斜め前へと動かす。指先が宙を泳ぎ、何かを掴むしぐさだと思った。
 たぶん、俺が彼女に声をかけたのは衝動的なもので、意味のある行為ではなかった。
 つい、うっかり。そう、たまたま言葉が零れてしまったのだ。

「雲は掴めそうっすか?」