(女性視点3)
 私は見てしまった。たまたま入った喫茶店で、和彦と女の人が手を握りあっているのを。許せなかった……。和彦はもちろん、そういうのじゃないと言っていた。例のサークルの先輩だって言ってた。でも二人の様子を見て思ってしまった。和彦の隣にいるのは私じゃ駄目なのかもしれないと。和彦の夢のそばにいるのは、彼女であって、私じゃない……。私では彼の創作の苦しみを理解することはできない。
 今までいろんなことがあった。和彦はいつも私のそばで笑ってくれていた。ずっとずっとそれが続いていって、それが当たり前だと思っていた。
でももう駄目なんだと思った。私は彼から離れていかなくちゃいけない……。ありがとう、ばいばい。和彦……。


(男性視点6)
 美樹は許してはくれなかった。西村先輩との仲を。そういうのじゃないけれども、でも悪いのは僕だ。隣にいるのは美樹だと思っていたのに、いつのまにか僕はすり替えてしまったのかもしれない……。もう一度美樹に会いたい。ただそれだけなのに、それがもうできない。
 手首を見ると、切れないミサンガが、悲しげに僕を見つめていた。
今なら分かる……、僕の夢。叶えられなかった僕の夢。でももう一度だけ出会えることがあるなら、僕はきっと今度こそ美樹と一緒に夢を叶える。
だからもう一度だけ、会いたい、彼女に……。(完)