(男性視点4)
僕達は順調に交際を進め、高校を卒業した。高校卒業後は二人とも大学に行くことになった。大学は違ったけれど、僕も美樹も文学部だ。いろいろ文章に触れる機会が多ければ、作家になる夢も近いのではと思って僕は文学部を志望したけれど、美樹は僕の夢を応援したいからと言って、わざわざ文学部を選んでくれた。嬉しかった。美樹のためにもがんばろうと思った。
それから僕は大学の文芸サークルに入ることにした。やっぱり夢に近づくには、書くことを目指している人達と高めあうことが一番だろうと思い、文芸サークルに入ってみた。入る時に、何か書いたものを持ってくるように言われていたので、僕は早速短編の小説を書き上げ、部長の橋本にそれを渡した。部長は最初の数ページをさらっと読み、こう言ってくれた。
「出だしがいい感じじゃないかなあ。残りはあとで皆と回し読みするとして、小林は作家志望なのか? もしそうなら、西村に指導してもらえばいい。ちょっと西村、こっちに来てくれないか」
幾人かのサークル員の中から、小柄の女性がやってきた。黒髪のロングヘアーに、眼鏡をかけた痩せ型の女性は、おずおずとした態度でやって来た。
「西村、おまえと同じ作家志望の小林だ。けっこういいもの書きそうな感じだよ。おまえのライバルになるかもな」
僕はいいもの書きそうと言われて、内心嬉しかったが、相手の女性は困ったような目で部長と僕を見比べた。それから彼女は自信なげに口を開いた。
「そんな、私がライバルだなんて、そもそも作家になれるかどうか……」
「またまた謙遜しちゃって。こいつ文学賞で入選したこともある強者なんだ。編集者の人から声もかけられているんだ」
「ほんとですか⁈ すごいですね!」
僕は思わず叫んでいた。今まで僕の周りで賞を穫った人は誰もいなかったから、本当にそれはすごいと思った。
「でも佳作ですよ……」
「佳作でもすごいですよ。僕なんてかすりもしないんだから」
西村先輩はうつむいて、無言になってしまった。
「ともかくよろしくお願いします! 西村先輩」
西村先輩は、しかたなさそうに頷いた。
それから僕は、部誌に載っている西村先輩の作品を片っ端から読んでみた。内容もいいし、描写力も凄い。まるでそれがそこで起こっているかのようなリアルな表現に僕は夢中になった。どうみても自信のない人の文章とは思えなかった。いったいどうやってあんな風に書けるのか、僕は知りたかった。そして文章とは別に、西村先輩の一歩退いた控えめな人柄に、僕は放っておけない何かを感じるようになっていった。
僕達は順調に交際を進め、高校を卒業した。高校卒業後は二人とも大学に行くことになった。大学は違ったけれど、僕も美樹も文学部だ。いろいろ文章に触れる機会が多ければ、作家になる夢も近いのではと思って僕は文学部を志望したけれど、美樹は僕の夢を応援したいからと言って、わざわざ文学部を選んでくれた。嬉しかった。美樹のためにもがんばろうと思った。
それから僕は大学の文芸サークルに入ることにした。やっぱり夢に近づくには、書くことを目指している人達と高めあうことが一番だろうと思い、文芸サークルに入ってみた。入る時に、何か書いたものを持ってくるように言われていたので、僕は早速短編の小説を書き上げ、部長の橋本にそれを渡した。部長は最初の数ページをさらっと読み、こう言ってくれた。
「出だしがいい感じじゃないかなあ。残りはあとで皆と回し読みするとして、小林は作家志望なのか? もしそうなら、西村に指導してもらえばいい。ちょっと西村、こっちに来てくれないか」
幾人かのサークル員の中から、小柄の女性がやってきた。黒髪のロングヘアーに、眼鏡をかけた痩せ型の女性は、おずおずとした態度でやって来た。
「西村、おまえと同じ作家志望の小林だ。けっこういいもの書きそうな感じだよ。おまえのライバルになるかもな」
僕はいいもの書きそうと言われて、内心嬉しかったが、相手の女性は困ったような目で部長と僕を見比べた。それから彼女は自信なげに口を開いた。
「そんな、私がライバルだなんて、そもそも作家になれるかどうか……」
「またまた謙遜しちゃって。こいつ文学賞で入選したこともある強者なんだ。編集者の人から声もかけられているんだ」
「ほんとですか⁈ すごいですね!」
僕は思わず叫んでいた。今まで僕の周りで賞を穫った人は誰もいなかったから、本当にそれはすごいと思った。
「でも佳作ですよ……」
「佳作でもすごいですよ。僕なんてかすりもしないんだから」
西村先輩はうつむいて、無言になってしまった。
「ともかくよろしくお願いします! 西村先輩」
西村先輩は、しかたなさそうに頷いた。
それから僕は、部誌に載っている西村先輩の作品を片っ端から読んでみた。内容もいいし、描写力も凄い。まるでそれがそこで起こっているかのようなリアルな表現に僕は夢中になった。どうみても自信のない人の文章とは思えなかった。いったいどうやってあんな風に書けるのか、僕は知りたかった。そして文章とは別に、西村先輩の一歩退いた控えめな人柄に、僕は放っておけない何かを感じるようになっていった。