(女性視点2)
「待った?」
「ううん、全然」
私は駅前で和彦と待ち合わせていた。これから二人で映画を観に行く。観る映画は和彦に合わせてアクション映画だったりする。私が恋愛ものの映画が観たいと言ったら、和彦はちょっと顔を赤らめて、それはなんか恥ずかしいから、嫌だなんて言われた。和彦の書く小説の中にだって、恋愛要素はあるのに。
それなのに和彦はさりげなく私の手を握ってきた。これは恥ずかしくないの? なんてこと思わず考えてしまう。
「行こう」
「うん」
中山君と別れてから私達は正式につきあい出した。最初はお互い照れて手なんてつなげなかった。幼なじみで普通のつきあいは長かったのに、彼氏と彼女になるとそれはまた全然別の話。SNSの返信だってすぐに返さなくちゃって思うことが結構あった。でないと和彦が心配してくる。和彦曰くまた他の男性が近づいてきたらと思うと心配なんだという話だった。それは私も反省している。中山君とつきあった方がいいか訊いたあの日、和彦の言うように、もっと自分の気持ちに向き合えばよかった。そうすれば、中山君とつきあうこともなかったのだ。和彦の気持ちも大事だけど、それ以上に自分の気持ちが大切だ。今は素直な気持ちで、和彦とつきあえていて、嬉しいし、幸せだった。和彦もそう思ってくれているといいけど。私は和彦の手をしっかり握りながらそう思った。
程なく映画館に着くと、たくさんの人で込み合っていた。余裕を持ってきたので、まだ上映時間まで、まだ時間があった。それで私達は喫茶店に入ることにした。和彦がコーヒーを注文すると私は紅茶を注文した。ウエイターがテーブルから離れると、私は得意げに、手首にはめてるピンク色のミサンガを見せた。
「これ、私が作ったの。かわいいでしょ」
「腕輪?」
「ミサンガよ。着けてると願いが叶うの。和彦のも作ってきたよ」
私はオレンジ色のミサンガを取り出した。
「えっ、俺はいいよ」
「なんで? 和彦にだって叶えたい夢あるでしょ」
「もちろん、あるさ」
和彦は大きく頷いた。
「作家になることでしょ?」
「もちろん、それもある。あともうひとつ夢がある」
「もうひとつ?」
「うん……」
「もうひとつってなに?」
私が気になって訊くと、和彦は笑って答えた。
「美樹が願かけしている願いごと、教えてくれたら教えるよ」
「えっ、私の願いごと?」
「うん」
「じゃあ、言うね」
私がすかさずそう言うと、和彦はぎょっとした顔をした。私が願いごとを教えないって思ってたみたいで、ちょっと慌てた様子がかわいかった。私は私で、少し恥ずかしかったけれど意を決して答えた。
「私は和彦とずっと一緒にいれますようにって願かけてるの」
「そうか……」
和彦は思ったよりも無反応な返事をした。えっと思ったけれど、次の瞬間、和彦は急ににこっと笑うと答えた。
「実は僕もだ」
「えっ?」
「好きな人とずっと一緒にいれたらって夢があるんだ」
「それって私のことだよね……」
おずおずとそう尋ねると、和彦はますます笑って言った。
「普通、そうだろ、この状況」
「う、うん」
「いいよ、やっぱりそのミサンガもらっておくよ」
「うん。ちゃんと身に着けてないと、願い叶わないからね、はい」
「じゃあ、さっそく着けるか」
そう言って和彦はオレンジ色のミサンガを手首にはめてくれた。
この頃が一番楽しかった。二人の間に疑いごとが何もなくて、なんでも信じられた素敵な毎日だった。
「待った?」
「ううん、全然」
私は駅前で和彦と待ち合わせていた。これから二人で映画を観に行く。観る映画は和彦に合わせてアクション映画だったりする。私が恋愛ものの映画が観たいと言ったら、和彦はちょっと顔を赤らめて、それはなんか恥ずかしいから、嫌だなんて言われた。和彦の書く小説の中にだって、恋愛要素はあるのに。
それなのに和彦はさりげなく私の手を握ってきた。これは恥ずかしくないの? なんてこと思わず考えてしまう。
「行こう」
「うん」
中山君と別れてから私達は正式につきあい出した。最初はお互い照れて手なんてつなげなかった。幼なじみで普通のつきあいは長かったのに、彼氏と彼女になるとそれはまた全然別の話。SNSの返信だってすぐに返さなくちゃって思うことが結構あった。でないと和彦が心配してくる。和彦曰くまた他の男性が近づいてきたらと思うと心配なんだという話だった。それは私も反省している。中山君とつきあった方がいいか訊いたあの日、和彦の言うように、もっと自分の気持ちに向き合えばよかった。そうすれば、中山君とつきあうこともなかったのだ。和彦の気持ちも大事だけど、それ以上に自分の気持ちが大切だ。今は素直な気持ちで、和彦とつきあえていて、嬉しいし、幸せだった。和彦もそう思ってくれているといいけど。私は和彦の手をしっかり握りながらそう思った。
程なく映画館に着くと、たくさんの人で込み合っていた。余裕を持ってきたので、まだ上映時間まで、まだ時間があった。それで私達は喫茶店に入ることにした。和彦がコーヒーを注文すると私は紅茶を注文した。ウエイターがテーブルから離れると、私は得意げに、手首にはめてるピンク色のミサンガを見せた。
「これ、私が作ったの。かわいいでしょ」
「腕輪?」
「ミサンガよ。着けてると願いが叶うの。和彦のも作ってきたよ」
私はオレンジ色のミサンガを取り出した。
「えっ、俺はいいよ」
「なんで? 和彦にだって叶えたい夢あるでしょ」
「もちろん、あるさ」
和彦は大きく頷いた。
「作家になることでしょ?」
「もちろん、それもある。あともうひとつ夢がある」
「もうひとつ?」
「うん……」
「もうひとつってなに?」
私が気になって訊くと、和彦は笑って答えた。
「美樹が願かけしている願いごと、教えてくれたら教えるよ」
「えっ、私の願いごと?」
「うん」
「じゃあ、言うね」
私がすかさずそう言うと、和彦はぎょっとした顔をした。私が願いごとを教えないって思ってたみたいで、ちょっと慌てた様子がかわいかった。私は私で、少し恥ずかしかったけれど意を決して答えた。
「私は和彦とずっと一緒にいれますようにって願かけてるの」
「そうか……」
和彦は思ったよりも無反応な返事をした。えっと思ったけれど、次の瞬間、和彦は急ににこっと笑うと答えた。
「実は僕もだ」
「えっ?」
「好きな人とずっと一緒にいれたらって夢があるんだ」
「それって私のことだよね……」
おずおずとそう尋ねると、和彦はますます笑って言った。
「普通、そうだろ、この状況」
「う、うん」
「いいよ、やっぱりそのミサンガもらっておくよ」
「うん。ちゃんと身に着けてないと、願い叶わないからね、はい」
「じゃあ、さっそく着けるか」
そう言って和彦はオレンジ色のミサンガを手首にはめてくれた。
この頃が一番楽しかった。二人の間に疑いごとが何もなくて、なんでも信じられた素敵な毎日だった。