「今日の早朝、彩珠(あじゅ)と途中まで帰っただろ。
 分かれ道になって、
 お互い、それぞれの道を歩いて行った。
 だけど俺はすぐに戻って
 彩珠の少し後ろをこっそりと歩いて行ったんだ」


「えっ⁉
 そうだったの⁉」


 全然気付いていなかった。


「でも、
 なんで……」


 私の後ろを……?


「心配だったから」


「心配?」


「あぁ。
 彩珠が家に帰ったとき、
 また親父さんに何か言われるんじゃないか、
 そう思うと居ても立っても居られなくて。
 彩珠が家から出てこなかったら、
 俺は自分の家に帰ろうと思った」


 そうだったんだね。


「だけど彩珠が家から出てきた。
 そんな彩珠のことをどうにかして助けたかった。
 だから偶然を装って彩珠に声をかけた」


 空澄(あすみ)の思いやり、気遣い。

 それらが心の中に染み渡り。
 行き渡って行く、全身に。


「本当にありがとう。
 空澄がそうしてくれた、
 その気持ちが、すごく嬉しい」


『ありがとう』

 何回、言っても。
 足りない、全く。


「いいよ、礼なんて」


 あれっ?

 空澄が。
 逸らした、顔を。
 私から。


 なんでだろう。

 そう思い。
 覗き込む、空澄の顔を。