なぜなら。
 じっと見つめているから、空澄(あすみ)が。
 私の顔を。


「どうした、彩珠(あじゅ)


「なんで見てるの?」


「あぁ、
 なんで、って……
 彩珠の口に合うかな、って思って」


 なるほど。


 確かに。
 気になると思う。

 自分が作った料理。
 それが相手の口に合うかどうかは。


「あのさっ」


 だけどね、空澄。


「……食べづらい……んだけど……」


 そんなにも見つめられると。


「あぁ、そうか。
 じゃあ、目を閉じれば大丈夫か?」


 えっ⁉


「なんでそうなるのっ?
 同時に食べればいいじゃないっ」


 空澄の気遣い。

 わかっている、それは。


 だけど。
 苦手だから、私はっ。
 見つめられる、食べるところを。
 そういうのはっ。


「彩珠、照れてるのか。
 可愛いな」


 可愛い、なんてっ。


「空澄でも、
 そんなふうにからかうことあるんだっ」


 そう。
 きっと、そう。

 からかっているんだ、空澄は。
 私のことを。


『可愛い』
 言う、その言葉を。

 そのことによって。
 私がどういう反応をするのか。


「からかう?
 なんで俺が彩珠のことをからかうんだ?」


 え。

 ということは……。


『可愛い』

 あの言葉は。
 空澄の本音?



 そう思ったら。
 熱くなってきた、一気に。
 顔が。





 そんな私のことを見ている空澄は。
「真っ赤になって可愛い」
 そう言った。


 聞いた、空澄の言葉を。

 そうしたら。
 熱くなってきた、もっともっと。
 顔が。