「心配しなくても大丈夫。
彩珠が彩珠のお母さんから着替えを受け取るときは
俺は木の陰にでも隠れてるからさ」
隠れる、木の陰に。
空澄がそう言ったのは。
たぶん。
空澄の気遣い。
「それまでは俺も彩珠とベンチに座って
彩珠のお母さんのことを待ってる」
空澄はそう言うと。
今まで私が座っていたベンチに座り。
「彩珠も早く座りなよ」
そう言って。
空いているベンチのスペース。
そこを手で軽くポンポンとしている。
そんな空澄に引き寄せられるように。
再び座る、ベンチに。
そのとき。
「失礼します」
そう言ってしまい。
それを聞いた空澄は。
「『失礼します』って、なんだよ。
今まで彩珠が座ってたところなのに」
とクスッと笑われてしまった。
「優しいね、空澄は」
そんな空澄が。
とても温かく感じて。
気付いたら。
そう言っていた。
「彩珠にそう言ってもらえると、すげぇ嬉しい。
ただ、俺の優しさは誰にでもってわけじゃないけどな」
空澄はそう言って。
見せた、無邪気な笑顔を。
その笑顔は。
朝日に負けないくらいキラキラと輝いていて。
私には眩し過ぎるくらいだった。