「何を言っているんだ。
そんな仕事をして何になる。
もっと世の中の役に立つ仕事をしなさい」
「なんでそんな言い方をするの。
お父さんは弱い立場の人たちを守ることは
世の中の役には立たないと思っているの」
「そういうことを言っているわけではない」
「そう言ってるじゃない。
お父さんの言い方は、いつも冷酷で人を見下した言い方をしてる」
いつもいつも。
そうなんだ、お父さんは。
「そういうつもりではない。
そういう仕事は他の人たちに任せておけばいい。
お前は、もっと上を目指しなさい」
「『上』って何っ?
仕事に上も下もないでしょ。
お父さんは、なんでいつもそんな言い方しかできないのっ」
これが。
これが人の模範にならなければいけない立場の者が言う言葉なのだろうか。
こんな父親が。
している、国を代表する仕事を。
それは。
あまりにも情けなくて。
なってくる、悲しく。
「悲しいことに現実はそうなんだ。
世の中には勝者と敗者、この二択しかない。
お前には敗者の道を歩んでほしくないんだ。
だから父さんは、いつもお前に厳しくしているんだ」
勝者と敗者……。
情けない。
本当にこの父親は。
どうして。
なってしまうのだろう。
そんな考え方に。
それから。
なにが厳しくだ。
あんなのは、ただの侮辱。
それを。
『厳しく』
そういうふうに正当化して。
言う、偉そうに。
なんだろう、本当に。
お父さんは。
思えない、意味不明としか。