「いいから黙って聞けよ、親父」


 なれ、どうにでも。

 言ってやった、そんな気持ちで。


 今まで。
 しなかった、一度も。
 そんな言い方は。



 驚いたのだろう。
 私の言い方に。

 お父さんは。
 見ている、私のことを。
 面食らったような表情(かお)で。


「なっ……なんて口の利き方をしているんだ、
 親に向かって」


 やっと声が出た、お父さん。

 だけど。
 いつもの威厳を持った感じではなく。
 かなり弱々しかった。


「今も言ったように、
 そんなには時間を取らないから」


 戻っていない、完全に。
 お父さんの表情(かお)は。


「あのさ、
 私、見つかったの、
 やりたいこと」


「やりたいこと?」


「うん」


 凪紗や心詞(みこと)や響基。
 それから惺月(しずく)さん。
 そして空澄(あすみ)

 出会えた、みんなに。


 そのおかげで。
 できた、見つけることが。
 自分の進みたい道。







 それまでは。
 諦めていた、自分という人生を。



 侮辱され続けていた、お父さんに。

 それによって。
 思っていた、自分のこと。
 落ちこぼれの失敗作、と。


 だから。
 いけない、持っては。
 目標も希望も。





 そう思いながら。
 他人事(ひとごと)のような気持ち。
 していた、そうなるように。

 自分のことだけど。



 そうじゃないと。
 たまらなかったから、辛くて。


 受け止めてしまう。
 自分のことを自分のこととして。

 そうしたら。
 完全に心が壊れてしまいそうだったから。


「まずは、お父さんが望むように大学には進学する。
 それで大学を卒業したら、
 弱い立場の人たちをサポートする仕事(こと)をしたいと思っている」


 だけど。

 違う、今は。


 空澄、凪紗、心詞、響基、惺月さん。
 みんなのおかげで。

 あるんだ、私にも居場所が。
 いいんだ、私は私で。

 できた、そう思うことが。



 だから。
 次は私が。
 力になりたい、少しでも。
 できる範囲で。

 少し前までの私のように。
 苦しんでいる人たち。
 役に立ちたい、そういう人たちの。