「それから、
こっちが彩珠の部屋の窓の前を飛んでいた蝶々」
空澄は。
ビー玉を持っている手。
その手とは反対の手に持っているガラスでできたような蝶々を見せた。
この蝶々は、ガラス……?
さっきは。
飛んでいた、優雅に。
「このガラスでできたような蝶々は、
探したい人のことを考えながら宙に放つと、
飛び立って探したい人のところに導いてくれるんだ」
そうか。
だから飛んでいたんだ。
私の部屋の窓の前を。
あのとき。
消えた、部屋のあかりが。
そのことも。
影響しているのかな?
その蝶々が。
そう思いながら。
自分の部屋の窓。
見る、そちらの方を。
そうすると。
見えた、カーテン越しから。
点いている、部屋のあかり。
そのことが。
「このビー玉で彩珠が履く靴を思い描く。
ビー玉が靴に変わって、
彩珠がその靴を履いたら出発しよう」
すごいな。
蝶々もビー玉も。
それらのおかげで。
できた、会うことが。
迎えに来てくれた空澄たちと。
「それから、
蝶々やビー玉、
ビー玉が変化した形のものも、
『心が呼吸できる世界』に現在入っている人たちにしか見えないって
惺月さんが言ってた」
「そうなんだね」
「それじゃあ、
ビー玉を彩珠が履く靴に……」
「やっぱり来ると思ったよ」
空澄が。
変化させようとした。
ビー玉を靴に。
そのとき。
聞こえた、後ろから声が。