「俺も初めてこの世界(ここ)に来たときは何が何だかわからなくて。
 とりあえず探索でもしてみるかと思って適当に歩いていたら、
 突然、女の人に声をかけられて
『初めての方は、まずこちらへ』と案内されたんだ」


「そうなんだ。
 那覇はこの世界(ここ)に来るのは初めてじゃないんだね」


「あぁ。
 俺は一ヶ月くらいになる」


 確かに。
 そうだよね。


 躊躇しなかった、那覇は。
 真っ白な光の中に入ること。

 ということは。
 初めてではない、那覇は。
 この世界(ここ)に来ること。
 なるのかな、そういうことに。


「だから那覇は真っ白な光の中に入ること躊躇しなかったんだね」


「いや、俺は初めてのときも全く躊躇しなかったけどな。
 逆に真っ白な光を見たとき
 恐怖よりも好奇心の方が勝っちまって。
 だから迷うことなく真っ白な光(あの)中に入って行ったんだ」


 なるほど。

 那覇は勇気があるんだね。


 私だったら。

 入っていく、一人で。
 真っ白な光の中に。

 ない、全く。
 そんな勇気は。


「じゃあ、行くか」


 那覇はそう言って。
 歩き出した、私の腕を掴んだまま。







 そういえば。
 掴まれたままだった、腕を。





 どうしよう。



 このまま。
 言わない、何も。

 いいのだろうか、その方が。


 それとも。
 離してほしい、手を。

 いいのだろうか、そう言った方が。