爆弾発言がされたのは、その日の晩ご飯の真っ最中だった。
母がうれしそうにこう言ったことがきっかけ。
「お母さんの親友が結婚するのよ。それでね、明日から実家に帰るつもりなの」
「えっ。そんなこと聞いてないけど」
「言ったわよー。莉緒ってばテレビ観てて聞いてなかったんでしょ」
母が「やーねー。ちゃんと聞いてよー」と不満を言う中、私はハンバーグを箸で切る。
なるべく母の隣、つまり斜め向かいの席を見ないように努めながら、少ししょっぱいハンバーグをご飯で流し込む。
「一泊してくるってことか」
そう言ったのは、義父だった。
「そうなの。でも、莉緒と匡人さんの二人で大丈夫かしら。ご飯が特に心配なのよ」
「大丈夫だ。心配せずに行ってこい。料理なら俺もできるし、なんなら莉緒もこれを機に料理を覚えてもいいし」
「お母さんいないなら、私は明日からミナんとこ泊まってくる」
早口で言うと、私は「ごちそうさま」と手を合わせてテーブルを離れる。
すると、「莉緒」と呼び止められた。
こちらを見ている義父と、近澤の姿が重なる。
いや、重なるもなにも同一人物なんだけども。