入学してまだ三ヶ月。

 厄介な生徒だと近澤に思われているんだろうな。

 私はそんなことを考えて、女子トイレでスカートの丈を直した。


 
莉緒(りお)ちゃんさー。まーた近澤先生に絡んでたよね~」

 電車に乗りこんだ途端、隣に立った早乙女健(さおとめたける)がそう言ってくる。

 私はどんどん後ろへ流れていく車窓の景色を眺めつつ、答えた。

「私が絡んでるんじゃなくて、あいつが絡んでくるの」

「ふーん。そうなんだ~」

 早乙女はそれだけ言うと、こちらを見降ろしてくる。

 185センチの彼は体を折り曲げて、私のスカートを見たあとで、ぼそっと独り言のように呟く。

「今はスカート、膝丈より下だね。全然、校則違反じゃないし」

 早乙女の言葉を、私は聞かなかったことにした。

 やけに視線を感じて辺りを見ると、うちの学校の女子だけではなく、他校の女子生徒も早乙女をチラチラと見ている。

 彫りの深い整った顔立ちは俳優みたいでスラリとした体型で背も高い早乙女は、ただ立っているだけで女子の視線を奪ってしまう。

 おまけにわざと私に聞こえるようなボリュームで「えー。隣にいるの彼女ー? 地味じゃん」とか妬むような声まで聞こえるけども。