びきびきと青筋が立ちそうな勢いで、近澤(ちかざわ)は私を睨みつけていた。

 私は、それを鼻で笑ってそれからこう言い放つ。

「なんですか? 近澤先生。女子高生の太ももに見とれるとかセクハラですよー! やだー!」

 わざと廊下に響くような大きな声で言ってみたけど、近澤は腰に手を当てたまま小さくため息をついただけだった。

 それから近澤は、私のスカートを指さし強い口調で言う。

「佐藤、お前のその短すぎるスカートに呆れていただけだ」

「はいはい。校則違反だって言いたいんですね」

「わかってるんなら直せ」

「先生の前ではイヤ」

 私がそっぽを向くと、再び近澤の大きなため息。

 周囲の生徒たちが、「あーあ。佐藤のやつ、また近澤イジメだよ」とか「絡まれて先生も大変だなあ」なんでヒソヒソ話が聞こえてくる。

 近澤がイジメられる、なんて玉じゃないでしょ。

 私はそんなことを考えてから、その場でスカートに手をかける。

 その瞬間、近澤は片手をこちらに突き出してストップの合図。

「わかった。ここで直すな。次見つけたら反省文だ」

 近澤はそれだけ言うと、職員室へと歩いて行った。