――――というようなことがあって、あれから一週間が経って、現在。
 俺はこうして三人娘と共に、ダンジョン巡りの日々を送っている。

「あ~……、疲れる、コレ……」
「やった~! おにいちゃんに強く握ってもらっちゃった~♪」
「お、いいなァ! ベルもベルも! ベルの上にも乗ってくれゴシュジン!」
「わたくしも! いっぱい放って(だして)欲しいですわ!」
「…………また今度ネ」

 相変わらず誤解を招く言い方が多いのだが、今疲れてるからツッコミは後にさせてください……。
 いや、ほんとに大変な一週間だった。
 ヒナの剣を操れたはいいものの……、その代償としてとてつもなく体力を消耗するということが発覚し……。
 そして更に、ベル、ルーチェの力も操れるようになり……と。追放されてからの一週間と、同じくらいの濃さを送ることになったのであった。

 なんだこれ、新手のいじめか?
 レオスに追放されてからの二週間、気が休まった時間がほとんど無いんだが?

魔力(えいよう)集めのために高ランクダンジョンを短期間でクリアし続けてたら、いつの間にか冒険者ランクもAに上がってるしな……」

 一見いいことのように思えるが、Aランクに上がった瞬間にめちゃくちゃ依頼の通知が来るようになったのだ。スピード昇格したこの三日間、通知に目を通すだけでいっぱいいっぱいだった。

「プレートは変わらず、黄色のままですけどね……」

 もうプラチナと黄色を行ったり来たりするのにも慣れてきた。
 首元のプラチナプレートの輝きを、ありがたく感じなくなってしまったな……。

「プラチナプレートを三人も従えているイエロープレートっていう噂が、どんどん広まっていってるしなぁ……」

 しかも相手は幼女である。幼女たちである。
 もうね……、世間からの視線はズタボロですよ。
 まぁそれでも、ユミナ含む一部の人間からの信頼は得ているし、その手のソルジャーたちからは、ある意味英雄視されているけれど。

「不当な評価だなぁ、ドリー一味……」
「パーティの色だね!」
「コンセプト次第ですわ!」
「ゴシュジン、腹減った」
「んもうこの子ら、自由すぎ!!」

 さて、そんな俺たちだが。
 現在メノートゥ神殿内部に出来た、変異ダンジョンを攻略中。
 このあたりでも有名な神殿が、突如としてダンジョン化してしまったので、元に戻して欲しいとの依頼である。
 依頼提供者は、やはりあのお方。ギルドの受付嬢さんです。
 あの人……、この手の案件抱えすぎじゃない!? お互い苦労性なんだろうなぁ……。

 潜ってみるとやはりというか何と言うか。
 あの時潜ったダンジョン以上に、内部はイレギュラーだらけだった。
 でもそれも、三人娘にかかればお手軽攻略だ。練習がてらちょっと装備させてもらったりもしたが……、全然でしたね。
 いやはや、強くて頼りになる子たちですこと。

「私たちが強くあれるのはおにいちゃんがいるからだよ!」
「そうだぞ! ゴシュジンは居るだけでえらい!」
「頼りになる旦那様ですわよ!」
「やめて! 急な持ち上げ、ホントやめて!」

 いいよそういうの! お前らみたいに、常時強いわけじゃないんだって! プラチナランクの力を使ったら、すぐに疲れ果てちゃうんだって!
 ……誰だ今、オッサンが●ッ●●終わったらすぐ寝ちゃう現象みたいだなとか思ったヤツ!? 確かに否定できねえけども! 疲れたらすぐ横になっちゃいそうになりますけども!

「と……とにかく。ゴールは目の前だ。さっさと終わらせてしまうか」

 待たせたなと言って立ち上がる。
 重い腰。くたびれた身体。方も凝ったし足も痛い。
 まったく……、オッサンだよなあ我ながら。

 そんな冴えないオッサン――――だったものに、
 コイツらは、屈託ない笑顔を向けてくれる。

 人外幼女に助けられ。
 人外幼女と共に生き。
 人外幼女と日々を過ごして。
 人外幼女と駆け巡る。

 忘れてたけど、明日から四十歳。
 まったく。
 面白い人生の、折り返し地点だ。


「行こう、おにいちゃん!」
「おう。よろしく頼むぜ三人とも」


 ダンジョンに吹く風は、強く、冷たく、どこか優しく。
 俺たちを、包み込んでいた。











「えっと……、めっちゃ嫌な予感がするんだけど……」

 ダンジョンクリア後。
 鎮静化し、元に戻った神殿が、神々しく光っていた。


「ありがとうございました……。私、ただいま助けてもらった神殿です……!」


 俺は。息を大きく吸い込んで口を開く。
 その声は、四方の山々に大きく響き渡ったという。


「間に合ってますッッッッッ!!」







   ようじょのおんがえし!
   QUEST CLEAR!