それからしばらくして、高校の同窓会に参加することになった。
 久しぶりの友人たちとの会話で盛り上がる中、端で傍観していた僕に寄ってきた一人が「あの子、なんかきれいになったよね」と耳打ちしてきた。
 目線の先には、女子で集まって談笑している君がいる。思わずムッと顔をしかめると、友人から怖い顔をしてると指摘されて気付く。
 周りから見たら、君を視界に入れている僕はそう見えているらしい。
 同窓会が終わった帰りに君にその話をしたら、小さく笑っていた。
 周りに流されて付き合い始めたこの関係が、今はとても心地良い。
 手を伸ばせば繋げるこの距離が愛しい。今も、これからもずっと、僕はそう思うのだろう。
 ――ただ一つの懸念を除いて。
「……あのさ」
「んー?」
 僕は君に「好き」だと伝えたことがあっただろうか。
 一緒にいることが当たり前で、小さな喧嘩もして思っていることを言い合ったこともあるけれど、これだけはお互いに聞いたことがないような気がした。
「……やっぱり、なんでもない」
 言えなかった。いや、言いたくなかった。
 この思いを伝えて、君が頷いてくれなかったら。――この関係が、終わってしまうかもしれない。
 君を失いたくないから、僕は言葉を飲み込んだ。