大学へ進学すると、僕らの時間は以前より愕然と減った。
 諸事情で実家から通える距離で選んだ僕に対して、ずっと興味があったものを本格的に学ぶために選んだ君。
 幸いだったのは、最寄り駅が同じだったこと。少しでも会える時間が欲しくて、駅前で待ち合わせをして一緒に帰る時間を作るようになった。
 寄り道をしながら、君が一人暮らししている家まで送る。
 真っ直ぐ帰れば十五分を、どうにかして伸ばそうとして二時間遠回りした時は「なにやってるんだろう」って笑ったね。
 春は公園の桜並木を散歩して、夏はコンビニでアイスを買って食べながら。
 秋になっても残暑は続いていたのに、一気に冬がやってくれば「手袋を忘れた」と理由をつけて手を繋いだ。想像以上に冷たくて、逆に僕の手が凍えてしまいそうだった。
 僕らしくもなく、手を掴んで自分のポケットに突っ込んだ時の君の驚いた顔は、きっと一生忘れられない。
 耳まで真っ赤になったのは、寒さのせいじゃない。