高校で初めて知り合った私たちの間には、恋愛感情なんて存在しなかったと思う。

 話が合って楽しくて、一緒にいて楽な人――それが惹かれるきっかけだったのかもしれない。 
 自覚したタイミングは、私にとっては最悪だった。目にかかった前髪を自分で切ろうとして、斜めに切りすぎてしまったのだ。どうやっても誤魔化せなくなった私に、君は「可愛いじゃん」と笑ってくれた。
 普段澄ました顔をする君が、珍しく笑った顔を見せると不意打ちで胸が高鳴った。
 ……君ってずるいよね。
 いつも一緒にいる友達の中でも、君は控えめで周りに合わせて流されやすい。
 だから悪戯したくなって「付き合っちゃう?」って聞いた時の君の顔が真っ赤に染まったのを見て、正直嬉しかった。
 生まれて初めての告白に返事はなかったけれど、その表情を見れただけで満足だった。

 それから二人で過ごす時間が増えてくると、君の新しい一面を知った。
 大きく笑った時にえくぼができること。
 趣味は読書というインテリなのに、部活で活躍するほど運動が得意だということ。
 甘いものが苦手なのに、コーヒーは必ずミルクと砂糖を入れないと飲めないのは意外だった。

 二人でいる時でしか見られない、今まで知らなかった君を独り占めしている時間が心地良くて、ずっと続けばいいと願っていた。