僕はバカだ。
 君がどんな想いで一緒にいてくれたのか、何もわかっていなかった。
 今から追いかけても無駄だとわかっていながら、僕は無我夢中に走った。
 目的地がわかっていても、どれだけ鍛えた脚力が備わっていたとしても、きっと間に合わない。
 それでも走ったのは、このまま終わりにしたくないと心の底から願ったから。

 冗談でも「付き合っちゃう?」って聞かれた時は本当に嬉しかったんだって。
 もらったミサンガは今もまだ切れていないんだよって。
 君にそんな顔をさせるつもりはなかったんだって、言わせてよ。
 僕はまだ、君に「ごめん」も「ありがとう」も伝えていないというのに!

「……っ、ずるいって」

 君って本当にずるい。

 今さら遅いかもしれない。君は呆れてしまっているかもしれない。
 でも僕が次に付き合う人の話を、君がしないで。
 ずっと見て見ぬフリをしたこの気持ちを、どうか思い出と呼ばないで。


 初めて愛おしいと思った相手も、ずっと傍にいたいと願う相手も、君じゃなきゃダメだった。