「違うわよ。誰もゆかりに頼まないわよ」
「そうよね。あぁ、びっくりした」ゆかりは心底ほっとした。
「さっき見たでしょう赤い鳥」
「赤い鳥って?」
「花壇のところ」
「学校の正門の?」
「そう。ゆかりは知らないだろうから教えてあげるね。私誠寿君の時もあれを使ったの」
「なに?」
「『忠彦君の気になっている女子のことを教えて』って書いた紙を1000円と一緒にカプセルに入れてあそこに埋めるの。そして目印に赤い鳥を刺しておくの。その赤い鳥が倒れていたら依頼を受け取った印。そこに今度は黄色い鳥が立ったら調べが済んだ印、その下に情報が入ったカプセルが埋まっている。という仕組み」
「全然知らなかった」
「1年生の時に変態の陽介が私たちのスカートの中を盗撮してたことがあったじゃない」
「うん」
「あの時、陽介の友達だったから誠寿君と忠彦君に相談したの。それがきっかけで誠寿君とだんだん仲良くなって、その時に赤い鳥に依頼したの。そしたら誠寿君も私のこと好きだって赤い鳥に教えてもらって、それで私からコクって付き合うようになったのよ」
「へぇ、そうだったの」
「うん」
「それ誰が調べてるの?」
「知らない」萌美は誰が調べているかなんて興味がなかった。「女子は知っている人いるのよ。どれぐらいの人が利用しているか知らないけど、恐ろしいぐらいに当たるんだから。これを使えば両想いになれるかどうか事前にわかるじゃない。フラれることにビクビクすることもないしね」
 ゆかりはあの花壇にそんな秘密があるなんて全然知らなかった。
「もしかして」気になってゆかりは萌美に尋ねた。
「そう。忠彦君の気持ちを知りたくて、今朝依頼したの」