昔は仲の良い家族で近所でも評判だった。
昔から無愛想な父だったが、明るいお母さんのおかげで毎日楽しかった。

変わったのはそう。
お母さんが亡くなった8年前。

誰もが悲しみ、家は一気に暗い雰囲気と化した。お母さんの存在はそれだけ大きかった。

父が変わったのもその頃だった。元々頑固で
厳しかった父。逆らうことは許されなかった。顔色を伺う毎日だった。
全てはいい職に就くため。勉強を強制される日々が始まった。

結果を出さなければ見放される。
〝お父さんに見捨てられたくない〟
その思いだけで必死に勉強してきた。
毎日のように塾に通い、寝る間を惜しんで勉強をすることも。
本当は勉強なんて苦手だった。
全ては父のため。

〝定期テストでは1番でなければ意味がない。〟
〝良い職につきなさい。〟
その言葉の数々がいつしか私を縛り付けた。
一歩も道を踏み外すことが許されない、綱渡りのように……。
進学先も、将来の職業も、決めたのは全て父だった。
私は父に従っていればいいだけ。つまり、父の用意した綱を上手く渡りきればいいだけ。そうすれば、いつかきっと父は私に振り向いてくれるはず。

そうしている間に、いつしか自分の将来に対して無関心になっていた。
幼少期の夢などとっくに忘れてしまって。