私の彼氏はみどり色

午前中に夏休みの宿題を片付ける。
お昼ご飯を食べたら待ちに待った彼のところに遊びに出掛ける時間。
「行ってきます!!」
トートバッグと水着の入ったカバンをつかむとサンダルを突っ掛け駈け出した。
今日も今日とて賑やかなセミたちのコーラスが聞こえてくる。
「夕方には帰ってくるんやで」
「はーい!」
ほっかむりをしたおばあちゃんが手を振る。

あの日から毎日、次郎丸さんのところに遊びに行っている。
川の近くに住んでいて、いつも緑色の水着を着ているけども優しくてカッコイイのは変わらない。
「次郎丸さん! 遊びに来たよ!」
川に石を並べ、堰のようになったところでスイカがプカプカと浮いていた。
「やあ、さくらちゃん。今日も元気だね」
河原に腰掛けた次郎丸さんが白い歯を見せて笑う。
何が良いのかって言われれば、なんなのかよく分からないけれど。
「今日は貰ったスイカを冷やしているんだ」
「おいしそうね!」
「おいしいよ。隣町のスイカ農家のおじさんに貰ったからね」
何気ない会話をするのが、ただ普通に楽しくて、一緒に過ごす時間がたまらなく大切の思える。
友達といるときよりも楽しく感じるのは、どうしてか分からないけれど。
「おいしいスイカはね、指で軽く弾くんだ」
「するとどうなるの?」
「低い音でポンポンという音がしたらおいしいスイカなんだよ」
わたしは言われた通り、指の腹で弾くというより叩いてみた。
ポンポン、と低く鈍い音がする。
「案外、音がしないのね」
周りから聞こえてくるセミのコーラスや川の水音にかき消されそう。
「高くて聞こえやすい音がするとね、中身がスカスカなんだよ」
なるほど。とうなずく。
スイカを食べて、川で遊び、夕焼け小焼けになるころ、家路についた。