オーシャンバトルが始まって2日目、激しい闘いだった1回戦と2回戦は、天海が勝った。
そして、今日はバトル自体は休み。
バトル日との間には、必ず休みを2日を設けて、その休み期間は様々な海域の住人達が交流する。
オーシャンバトル期間中は、各海域に神の滝道が開き、移動で10日程かかるのが各海域に一瞬で行き来ができる。
そうやってポセイドン様は、バトルとは別に民に番を見つけさせるイベントを設けてる。
種族子孫繁栄の為に。

そんな俺とアオは今日は、師匠が戻ってくると知らせがきて、師匠と夕食をとる為に街に買い出しをしたり住処を掃除した。
さらには、夕食の準備までし、匠が来るまで2人で休憩した。

「今日は父さんがくるんだー!楽しみだな」
「そうだな」
「ねぇ、セラ」
「なんだ?」
「父さんとセラはどうやって会ったの?」

ついに来たか、アオの口からいつか来るであろう質問が。

「そうだな…師匠と会ったのは145年前だ」
「そんな前なんだ」
「まぁ、お前からしたらな…。あの時は子どもで色々荒れていた」
「へー…セラも荒れてた時代があったんだ」
「俺が子どもの時は、オーシャンは今より荒れていたからな。ただでさえ弱肉強食な世界で、子ども1人生きるには色々な事をしたさ」
「……セラのお父さんや母さんは?」
「亡くなった」
「あ……」

アオは聞いちゃまずかったと、顔を悲しそうな顔をする。

「ごめん…聞いちゃまずかった?」
「いやいい、この世界じゃ子どもが親を亡くすなんてよくある話だからな」
「セラは寂しくはない?」
「俺は…寂しくはない」

俺はアオの頭を優しく撫でた。

「お前がいるからな」
「セラ…」

アオにキスをしようとした瞬間。

バン!!

「「!?!?」」

勢いよく玄関のドアが開く音がして、すぐさまアオにキスをするのをやめた。

「今来た」
「父さんだ!」

アオは玄関の方に急いでむかった。
俺もアオに続いて玄関に向かった。

「父さん!」
「アオ…」
「お帰りなさい師匠」
「セラ…」
「父さん!ほら!荷物持つからさ、入って!」

アオが師匠の荷物を持ち、師匠が住処に入ってきた。

「セラと父さん、夕食の準備するからさ先に風呂入ってきなよ」
「あぁ、そうする。ほら行くぞセラ」

アオが夕食の支度をする間に師匠と風呂に入る事にした。
風呂と言っても、陸の風呂とは違い温泉に近く、オーシャンでは住処に温泉を持つのは当たり前だ。

「……」
「……」

師匠と風呂入るのはかなり久しぶりだ。
まさか、この歳で師匠と入るとは思わなかった。
しかし、師匠と話す話題が分からないと言うか、久しぶり過ぎで中々話せない。
そんなこんなで、頭も身体も洗い終わって温泉に浸かった。

「ふぅ……久しぶりの温泉だ」
「久しぶりなんですか?」
「まぁな、深海だと温泉は限られてるからな」
「そうなんですか」
「セラ」
「なんです?」
「アオはどうだ?」
「!?」

まさか師匠から聞いてくるとは思わなかった。
父親として、聞いてくるのは当たり前だろうが。

「アオはとても強いメスだと思ってます」
「……」
「師匠とやった修行も取り入れて、修行を共にしてきましたが、師匠を取り戻す目的の為に、辛い修行でも弱音を吐かず逃げもせずに、やりこなして今に至ります」
「そうか…」
「……」
「夜の営みではどうだ?」
「ゴフッ!?」

師匠の直球的な質問に吹き出しそうになった。

「ちょ、師匠!?」
「何故、慌ててる?」
「いや、師匠が直球的な質問したから」
「父親として聞くのは当然だろ?」
「いや…その……」
「まぁ、お前ならアオには酷い扱いはしないだろうが、俺はまだ認めてないからな」

師匠は先に温泉を後にした。
師匠が俺に言った事は、師匠としてよりかは父親としての言葉だろう。
それもそうだ、師匠は1000年以上も生きて、俺は師匠からしたらまだ子どもみたいな感じだ。
そんな奴に、愛娘の番となると不安になるのは仕方ない。

「俺もまだまだだな……」

俺もしばらく温泉に浸かった後に、温泉を後にした。

「セラ!夕食出来てるから、座って!」
「あぁ…いい匂いだな」
「へへ、今日はねチャーハンと餃子、青椒肉絲!沢山作った!」

アオが少し嬉しそうに手を引こうとした瞬間。

グイ

師匠がアオを抱き寄せた。

「と、父さん!?」
「…………」
「…………」
「父さん?セラ?」
「師匠、いくら師匠でもいきなりそうゆう事するのはどうかと」
「父親として当然な事をしたまでだ」
「?????」

師匠は、師匠としての顔ってよりかは…父親としての目付きで俺をみる。
というか、初めて師匠が愛娘溺愛な所を見てしまった。
なんというか…あんまり見たくはなかった。

「えっと…父さん…離してくれない?ご飯食べたいからさ」
「あ、ああ…すまない」
「え?なんでそんな顔するの?」
「いや、ただ」
「アオ、師匠は愛娘が俺と関わるのをみた…」

どぉおん!

「セ、セラ!?ど、どうした!?」
「セラのやつ、相変わらず魔力の制御がなってないな」
「そ、そうなの?」
「……っ」

師匠…恥ずかしいからか、本当の事言おうとした瞬間に、俺を魔法壁で弾き飛ばした。
しかも、オマケに動けなくなる痺れ魔法まで丁寧に仕掛けて…。

「師匠ぉ…」
「ほら、アオが夕食をとりたいらしい…早くお前も座れ」
「んぐ!?」

動けない俺を師匠は、首根っこを掴んでズルズルと引き摺り、椅子に座らせた

「セラ本当に大丈夫か……?」
「なに、心配するなアオ、コイツはちょっとやそっとじゃ死なない」
「そうなのは知ってるけど……」

アオは少し俺を心配そうにみる。
だが、俺は身体が痺れても自力で回復が出来るため、直ぐに治した。

「ほらな」
「すごい…」
「師匠…」
「アオが作った夕食が冷める。食べよう」

師匠は俺の訴えを無視し、夕食を食べ始めた。
アオと師匠は久しぶりの親子揃っての夕食だからか、会話がかなり弾んでる。
俺もアオが楽しんでるのをみて嬉しいはずなのに、何故か気持ちが変な感じがした。

「まただ…」
「どうかしたセラ?」
「いや、大丈夫」
「そっか」

師匠に対してもまさかこんな…嫉妬をしてしまうなんて。
師匠は、俺にとっては父親みたいなもんで生きる全てを教えてくれた。
だけど、アオへの感情が大き過ぎて嫉妬してしまう。
俺も会話に加わりたい…。
複雑な感情がふつふつと出るものの、それを抑えながらチャーハンを食べた。

「美味かった、母さんに似て美味いな」
「へへ、ヒフミ叔母さんから料理とか教えて貰ったんだ」
「そうか、ヒフミからか…」

俺は幼い頃に両親を失って、アオみたいな親から褒められた記憶はもうあるかないかだ。
俺は何故か、2人のやり取りが羨ましいと思ってしまった。

「……」
「セラ?」
「……ん、あ、いや…なんだ?」
「……少し歩こうか?」
「へ?」

アオは何か分かったかのように、俺の手を引こうとする。

「アオ、ダメだ」
「お父さん!さっきからダメダメって!私は子どもじゃない、少し散歩するだけだから!お父さんは絶対に来ないでね!来たら口聞かない!」
「…………」

アオの一喝に師匠は折れたのか、これ以上止めることはなかった。
俺とアオは住処のすぐ近くの丘に行き、そこで2人っきりになった。

「やはり、ここは良い景色だなー!アトランティスが一望できる」
「……」
「なぁ、セラ」
「なんだ?」
「さっき、嫉妬してたでしょ」
「……」
「やっぱり、あと羨ましいと思った?」
「分かってたのか?」
「分かってたというか、私もつい最近までセラみたいに両親がいなくて、両親がいる周りの子達が羨ましかったから、セラの表情みて気付いた」

アオは優しく話しかける。
その時の声のトーンが落ち着いていて、俺の感情を落ち着かせるようだ。
次第に何故か、涙が溢れ出ていた。
その声のせいかは分からない。
俺は気付いたら、アオを両腕で優しく抱きしめていた。

「お前が師匠と話してる様子をみたら、師匠に嫉妬したり羨ましかったり…分からない感情が出てきた。師匠は俺にとって、親みたいな存在でもあった。あの人から褒められるのはほぼなかったけど」
「そっか」
「お前が、師匠と2人で陸に戻るかもしれないと考えたら不安で…分からなくなった」
「そっかそっか」
「また、大切な誰かを失いたくないって…アオも師匠も俺にとっては大切な人なんだ…」

アオが優しく頭を撫でて、宥めてるのがよく分かる。

「私ね、セラに出会えてとても幸せ者だなって感じてる。セラと辛い修行や色々してきたけど、セラが居てくれたからここまでこれた。確かに父さんも大切だけど…1番大切なのはセラだから。セラの両親にはなれないけど、セラが寂しい思いをさせないようにするから」
「アオ…」
「だから、セラ…辛い時はね…甘えてきてもいいから。」
「あぁ…」
「それに、私はセラを置いてどこにも行かない!」

アオの優しさが、海の波の如く俺の不安や嫉妬の感情を消していく。
消し去ったおかげか、俺はアオに打ち明けることにした。

「アオ、俺は…先に謝らないといけない」
「どうしたの急に?」
「いや、この前夢…いや、願いの話をしただろ?」
「あーあれね」
「実を言うと、俺の願いは…一族を殺した男をこの手で殺したいと願ってた」
「……」

アオは真剣に優しく俺の話を聞いてくれた。
そう、俺がアオに隠して事は。
この俺が、このオーシャンで最も希少で誰もがその血を欲する…一族、ラティメリア族の生き残りだということを…。
オーシャンでは魔法が主だが、俺の一族は唯一術が使える数少ない一族で、その中でも頂点に立つくらい強い一族だ。
代々術を使う事により、魔法以上の強さを得ることが出来き、不可能を可能にしてきた。
しかし、その強さは他の一族にとってはなんとしても欲しい力。
己の私利私欲の為に、その強さを求めては争いが絶えなかった。
もちろん、俺の一族も私利私欲の為に術は使わなかった。
しかし、どんなに護っていても1人のオスによって、一族は一夜で滅ぼされた。
滅ぼしたそいつの名は------

『メガロドン』

幼かった俺は、両親に術の全てを託され、両親が目の前で食い殺されるのを隠れて見ていた。
運が良かったからかそいつから見つからずに生き延びた。
しかし、一族を失った俺はメガロドンに復讐心を抱いてた…。
だけど、この世界じゃ術者は忌み嫌われる。
俺もまだ幼かったから、力を抑えるのが出来なくて、人攫いとかによく狙われていた。
そんな時だ、死にそうな所を師匠に助けられた。
あの時の師匠はかっこよかった…。
術とは真反対な魔法なのに、何故か戦う師匠の姿が自分の父親と似ていた。
それから、俺は何度も諦めずに弟子になり、魔法を会得し、復讐と言う願いを叶えさせるためにバトルに参加した…。
本来の力を隠してな…この力を知ってるのは、師匠とポセイドン様だけだ。

「…俺が術を使う時、それはきっとお前を護るために使いたい。最初は復讐が目的だったのが、お前と触れ合って、色々な経験をして…お前の夢や願いを知ってから、復讐じゃなくてお前の傍に居たいと願うようになった」
「そっか、なら大丈夫だな」
「大丈夫とは?」
「今でも復讐心があるなら、1発殴るところだった。だけど、今のセラは復讐心よりも、誰かを大切にしたいと思う心がある」

アオは俺から離れて、優しく頭を撫でながら満面な笑顔を見せた。

「さて、そろそろ帰ろ!父さんがま…」
「アオ、セラ」

俺達を探しに来たのか、師匠が迎えに来た。

「父さん!?…まさか、探しに?よく分かったね」
「お前達を探すのは1分とかからなかったが、まぁ…お前達の話を盗んで聞くのは流石にな」
「師匠…」
「アオ、先に帰ってくれないか?俺はコイツとちょっと話がしたい」
「わ、分かった。あ、父さん。あんまりセラに強く当たらないで」
「分かってる」

アオは師匠に言われ先に住処にに戻っていき、俺と師匠2人だけになった。

「アオの前だったから言わなかったが、お前…あの闘いの時、秘術使ったな?」
「やはり、師匠ならバレますか…」
「他の奴らには分からないが…俺はすぐに分かった。何故だ?今まで使わなかったのを俺に使った?術士一族の血でも騒いだか?」
「アオを護るためです」
「それを言いながらお前は、本気を出さなかったな。お前は魔法と術…両方使えば俺の首を跳ねることも出来ただろう」
「しなかったのは師匠が一番分かると思います」
「それもそうだな…ただ、この先は過酷な戦いになる。いくらお前がアオに過去を知らされたくないからと隠し続けるのにも時間の問題って事を頭に入れとけ」
「その心配はいりません」
「……」

師匠は少しだけ驚いたが、俺の言葉に師匠は理解した。

「アオに話したのか?」
「はい」
「で、どうしたいんだお前は?」
「俺は、復讐心捨てる。これからは、アオの夢が俺の夢でもあり願いになる。だから、俺はもっと強くなりたい…」
「そうか」

師匠は分かるか分からないかの差だが、少しだけ笑った。

「師匠?」
「今のお前なら、アオを任せられる。俺がお前をアオの番として認めてなかったのは、復讐心があったからだ。復讐心からは破滅しか生まれない」
「……師匠は、アオの母親には会いたいとは思わないのですか?」

師匠は少しだけ間をおいて口を開いた。

「……会えるなら会いたいさ。」
「やはり師匠も、アオの母親のことは…」
「愛していた…いや、今でもな。ホタル…アイツは俺にとって全てだった。アイツが居たから、戦士だけではなく色々な事を教えてくれた…。だから、魂の契約に瞳を差し出すには躊躇はなかった。それに、お前と俺はよく似ている。愛する者一筋や不器用な所とかな」
「それって…」
「お前を弟子として拾ったのは、お前が昔の俺に似ていたからだ。あの時はまさか弟子をもつとは思わなかったが、お前は俺と修行する度に強くなった…」
「師匠…」
「弟子として見ていたのが、まさか義理の息子になるとはな…セラ」

師匠は優しく頭を撫でた。
師匠の手は戦士らしい手で、表情もオスらしくかっこよかった。
師匠から、今まで求めていたであろう父親としての行動に俺は次第に涙が溢れてきた。

「師匠…俺は…」
「あんまり泣くな、どう反応したらいいか俺が困る」
「すみません」
「まだ、そうゆう所は子どもだな。それとだ、お前が強くなりたいと言うなら、俺はお前に徹底に教えるが…どうする?」
「俺は…強くなりたい。アオの夢を叶えさせるために」
「よしなら、明日から修行だ」

師匠の修行は、とてつもなく辛くキツく大変な事だと分かってる。
しかし、アオの夢を叶える為ならばそれも乗り越えて行こう。
俺はそう心に固く誓った。