俺が恋したのは陸の人間でした-OCEAN TAEIL-

「じい様!!」
「おぉ!シャクナゲ」
「じい様!みてみて!今日は大きなマグロを仕留めたよ!」
「立派なマグロだ、この大きさなら村の皆の分はある」
「じゃ、じゃあ!今日は皆で宴!?」
「そうだな。シャクナゲ、村の皆にこの事を伝えてくれないか?」
「分かった!」

シャクナゲはモンハナ族の長の孫娘だった。
シャクナゲの両親は、先の魔界戦争により戦士として亡くなり、祖父であるシャクナギの元で育った。
天真爛漫で、村の者からも好かれていた可愛らしく、村の事はやな言葉一言も言わず、自分から取り組むという心優しい娘だった。
そんなある日の事だった、村に1人の男が現れた。
身体は大きく強靭で、背中にイルカやサメが持つ特徴的な背鰭、サメ特徴な背鰭。
そして、その男はオーシャンなら知る人は知る罪人。

「メガロドン!?、なぜ貴様の様な男がここにいる!」
「久しぶりだな、シャクナギ。まさか村の長になるとはな」
「……お前こそ、なぜここに来た」
「…鍵を貰いにきた」
「!?」
「お前が、大人しく渡せば村には手は出さない」
「……あの鍵は絶対渡せないぞ!」
「そうかならば、死ね」

ドォォォォォン!!

「!?…今のは」
「どうしたんだシャクナゲ?」
「今の凄まじい音、長家から聞こえ……じい様!」
「おい!シャクナゲ!」

シャクナゲは鍬を投げ捨て、直ぐに長家に向かった。
 
「嫌な予感がする…じい様!じい…っ!?」

シャクナゲが長家に着く頃には、長家は破壊されていた。

「じい様!どこ!!じい様!」
「……っ、シャクナゲ…」
「じい様!」

瓦礫の下になっているシャクナギを見つけ、シャクナゲは直ぐに駆け寄り、瓦礫をどかしてシャクナギを助け出した。

「じい様、これは一体…」
「ちょっとばかし、しくじっただけだ」
「だけど!」
「シャクナゲ」
「!?」

シャクナギはシャクナゲの手を力強く握った。

「シャクナゲ、ワシはそんなに長くはない。孫娘にはせめて、メスとして幸せに生きて欲しいと願った。だが、やはりモンハナ族の運命か、戦う一族は戦いから逃れる事はできない。シャクナゲよ、今日からお前が長として、戦士として一族を導きモンハナ族を……」
「じい様!じい様!そんな!じい様!」

 シャクナゲの腕の中で、シャクナギは息を引き取った。

「あ、あ…ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」

シャクナゲは悲しみと怒りから、拳に力を込めてその場にあった瓦礫を拳で吹飛ばした。
幼がらも、シャクナゲの拳は凄まじく近くの山を破壊する程だ。
それもそうだ、シャクナゲにとってシャクナギは唯一の家族だった。
家族を失う悲しみを再びシャクナゲは味わい、そしてシャクナギの意志を受け継ぎ、女長として一族を導き、己の拳一筋を鍛え上げ、そして今シャクナゲが戦士として一族の誇りを掛けて、闘技場に立ち闘うことになった
「信じるのは己の拳のみ!!誰がこいつの拳を止められるだろうか!!否!!神の力を持ってもコイツの拳は止めることはできない!!振りかざした拳には一族の誇り名誉を背負い、唯一無二な拳闘士!!シャクナゲクラフト!!」

『シャクナゲ!シャクナゲ!シャクナゲ!』

「己の食欲を満たすのならば、例え魔海獣でさえも一呑みする、深海一の暴食戦士!!ホウズキ!!」


『ホウズキ!ホウズキ!ホウズキ!』


シャクナゲとホウズキを呼ぶ観客の声援が凄まじく、俺とアオが居る医務室まで聞こえてきた。
次は拳闘士シャクナゲと暴食のホウズキの闘い…。
ただでさえ、この2人の威力は凄まじいのにこの2人を闘わせるとは、恐ろしいものだな。

「それにしても、相変わらずの声援だな…」

俺は闘いの後、アオと一緒に医療班に医務室に連れていかれ手当てをされた。
俺は闘い慣れてるから傷という傷はなかったが…。
アオは魔力を使い過ぎたせいと、戦闘の肋骨が折れてる痛みから気を失ってしまった。

それもその筈だ、合体は本来番、つまり人間側の身体をベースになる。
ベースになるからこそ、戦闘のダメージは人間に全て行く。
そのダメージを軽減する為に、戦士が一緒に戦う。
しかし、やはり人間は俺達に比べたら弱くて脆い。
だからこそ、闘いにおいてはダメージを出来るだけ受けさせないといけない。

「アオ…」
「ん…」
「アオ?」
「……セラ?……父さんは?…たしか…」
「師匠なら今やるべき事をやる為に、1度深海に戻ってる…」
「戻ってくる?」
「あぁ…」
「そっか…よかった」

アオは嬉しそうな笑みを見せ、ゆっくりと起き上がる。

「魔力を使い過ぎてる、体力がまだ回復してないうえに、肋骨が折れてるから動かさない方がいい…」
「…でも、次の闘い見たい…次シャクナゲでしょ??」
「声援が聞こえたのか?そうだが…なんでそこまでして見たい?」
「私の最初の研究というか…子どもの頃の自由研究だったけど、シャコについて研究したんだ。あの時はシャコを捕まえるなんて、子どもには危険な事だったから動画や写真しか見てなくて…もし、生でシャコのパンチを見れるならみたいなって」
「本来の姿ではないけどな」
「いいんだ、好きだから」
「分かった、会場の席まで俺が担ぐから」
「ありがとうセラ」

俺はアオを背中に背負い、医務室を後にした。
アオは会場に着くまでに、先程話した話の続きを俺に話した。

「もちろん、大人になってからもシャコを捕まえて、飼育してたんだけど、何故か私が見ないところでしかパンチをしなくて…」
 
懐かしかったのか楽しい思い出だったのか、アオが嬉しいそうにしてるのが、後ろから聞こえる声を聞いても分かる。

「ほら、話の途中だが着いたぞ」

ドォォォォォン!!

「まさか、メス如きがこの俺と互角に闘えるなんてなぁ!最高だなぁ!」
「お前こそ、図体デカい割には素早い動きが出来るじゃねぇか!」

シャクナゲとホウズキの拳と拳が、激しくぶつかり合い、互いに譲らない状態。
そして、闘技場はシャクナゲとホウズキの闘いで、観客の熱い歓声で盛り上がっていた。
 
「…凄い…アレがシャクナゲ…」

アオは闘技場で闘ってるシャクナゲの姿に惚れたかのように視線を外さなかった。
そんな歓声の中、俺らを呼ぶ者がいた。

「おー!!セラとアオだー!!おーいお前ら!!コッチ来いよー!!」
「エスパーダ…」

エスパーダや他の7天達がまとまって座っており、オレはアオをそこまで、アオを運び一緒に座った。

「どうだエスパーダ?」
「シャクナゲの奴もすげーが、一緒に闘ってるシャクナゲの番も中々だぞ?」
「ほう?シャクナゲの番の名は?」
「たしか…カネロ・アルバートって言ってたな」
「カネロ・アルバート!?」

アオが驚いたように、エスパーダの方をみる。

「なんだよアオ、知ってるのか?」
「知ってるもなにも、カネロは元WBA・WBC・WBO世界スーパーウェルター級王者で、さらに世界4階級制覇した、ボクシングを知らなくてもかなり有名なプロボクサーだ」
「なるほどな、シャクナゲが番にしたがるわけだな」
「いや、それだけじゃないらしいぜ?」

エスパーダは俺達に、シャクナゲとカネロの事を話した。
どうやら、シャクナゲはポセイドン様の目を盗んでは定期的に陸に上がっては、陸で行われていたボクシングを見に行ってたらしい。
まぁ、オーシャンにも似たようなものはあるが、どうやら陸のボクシングが面白いのは確かだ。
そんな、シャクナゲはボクシングで闘ってるカネロを見て惚れた。
人間ながらも、強靭な肉体に、どんなに窮地に追いやられても誰にも屈しなく拳。
そして、シャクナゲは思った。カネロと拳同士で闘いたいと…。
シャクナゲは飛び入り参加で、カネロのイベント試合に参加した。

『なぁ、お前ウチと拳で闘ってくれよ!』
『…女だと…俺は女には…』

シュッン!

『!?』
『女だからなんだ??ウチを甘くみると痛い目みるよ』

シャクナゲとカネロは拳をぶつけた。
もちろん、シャクナゲは本気は出さなかった。
出したら普通の人間だと殺しかねない。
だが、本気を出てないシャクナゲの拳でも、それなりの強さはあった。
もちろん、カネロにもそれは効いており、力の差でカネロが負けかけたときだった。
カネロは最後まで諦めず、身体全身を使い全力で拳を入れた。

ドッ!!

『んぐっ!?』
『はぁ…はぁ…あ!?しまった!!つい集中して…!君大丈夫か!!』

シャクナゲはリング上で倒れ、気を失ってしまったため、直ぐに担架で運ばれた。
そして、カネロはシャクナゲが目を覚めるまでそばにいた。

『たのむ…俺のばかぁ…こんなぁ…』
『アンタ、何落ち込んでるんだ?』
『!?!?』
『へへ…やっぱりアンタの拳…人間でもアンタくらいになったら、ここまで食らうとは思わなかった』
『え、ええ!?無事!?てか、傷!あれ?ない?なんで!』
『こんな傷なら大丈夫だ直ぐに自分でも治せる…』
『いやいや、治せるからって…。今タオル持ってくるから!顔に血ついてる!ほら…拭いて。…済まなかった…』
『なんでアンタが謝るんだ?アンタはウチの申し込みに勝ったんだ喜べよ』
『いや、喜べない…俺は女の子の君の顔に拳を入れてしまった。最低な男だ』
『…アンタ、ウチをメスとしてみてるのか?』
『め、メス!?いや、メスと言うか…女の子としてだよ!いや、一緒か!!なぜをそれを』
『いや、今まで闘ってきたからメスとして見られるのは初めてで…』
『そんな、き、君はどこをどう見ても可愛いらしい女の子だよ!むしろ、なんで格闘をやってるんだって思うくらいだよ!』
『か、かかか可愛いらしい!?!?////』

シャクナゲは今まで戦士として生きてきたから、異性であるカネロに、まさか初めてメス扱いされるとは思ってなく、カネロのシャクナゲを心配する言葉がシャクナゲの心を虜にした。
そして、カネロもシャクナゲの可愛いらしく逞しい姿に惚れた。
それから、正式にオーシャンバトルに参加する為にシャクナゲがカネロに番を申し込むと、カネロはプロボクサーを捨て、シャクナゲとともに歩む道を選んだ。

「ほへー…」
「よくそこまで知ってるな」
「まぁなー。だってシャクナゲ本人が話してたからな」
「そうか…それにしてもアオ」
「なに?」
「お前が見たいものは見れたか?」
「うん…凄い…アレがキャビテーションとソノルミネセッス」

キャビテーションとソノルミネッセンスとは、シャコがパンチする瞬間に起きる現象で、ソノルミネッセンスは発光現象の中で、液体中に含まれる気泡と超音波によって引き起こされる発光の事。
この発光は物凄いエネルギーをもつシャコだからこそできる発光。
そして、パンチした時にパンチの威力で真空の泡キャビテーションが発生する。

「凄い…本来の姿でもソレをみるのは一瞬なのに…それが何度も何度もみれるなんて」

アオは学者の目でシャクナゲの戦闘をみる。
シャクナゲも負けじとホウズキにたたみかける。
何度も何度も何度も。
一撃一撃が重たいのか、暴食のホウズキは徐々に押されていきついには。

『なんとぉ!!ホウズキノックダウン!!シャクナゲがウィナァァァァァ!!』

「シャクナゲ勝った!!勝ったよセラ!」
「あぁ、そうだな」

周りはシャクナゲの勝利に嬉しさで歓声を上げてるが、俺は少しだけ変な感じがした。
おかしい…確かにシャクナゲは強いホウズキも倒せる力はある。
だが、問題はホウズキだ…。
アイツは暴食と言われるほど、弱肉強食が好きな奴で、相手が強ければ強いほど得意の技を出すヤツなのに…それを一切使わなかった。

「……」
「セラ?どうした?」
「いや、なんでもない」

俺の勘が、今の師匠を抜いた深海7天が何かしら企んでると訴えてる。
しかし、それが分からない為おれは歯がゆくて変な気分になった。
オーシャンバトルが始まって2日目、激しい闘いだった1回戦と2回戦は、天海が勝った。
そして、今日はバトル自体は休み。
バトル日との間には、必ず休みを2日を設けて、その休み期間は様々な海域の住人達が交流する。
オーシャンバトル期間中は、各海域に神の滝道が開き、移動で10日程かかるのが各海域に一瞬で行き来ができる。
そうやってポセイドン様は、バトルとは別に民に番を見つけさせるイベントを設けてる。
種族子孫繁栄の為に。

そんな俺とアオは今日は、師匠が戻ってくると知らせがきて、師匠と夕食をとる為に街に買い出しをしたり住処を掃除した。
さらには、夕食の準備までし、匠が来るまで2人で休憩した。

「今日は父さんがくるんだー!楽しみだな」
「そうだな」
「ねぇ、セラ」
「なんだ?」
「父さんとセラはどうやって会ったの?」

ついに来たか、アオの口からいつか来るであろう質問が。

「そうだな…師匠と会ったのは145年前だ」
「そんな前なんだ」
「まぁ、お前からしたらな…。あの時は子どもで色々荒れていた」
「へー…セラも荒れてた時代があったんだ」
「俺が子どもの時は、オーシャンは今より荒れていたからな。ただでさえ弱肉強食な世界で、子ども1人生きるには色々な事をしたさ」
「……セラのお父さんや母さんは?」
「亡くなった」
「あ……」

アオは聞いちゃまずかったと、顔を悲しそうな顔をする。

「ごめん…聞いちゃまずかった?」
「いやいい、この世界じゃ子どもが親を亡くすなんてよくある話だからな」
「セラは寂しくはない?」
「俺は…寂しくはない」

俺はアオの頭を優しく撫でた。

「お前がいるからな」
「セラ…」

アオにキスをしようとした瞬間。

バン!!

「「!?!?」」

勢いよく玄関のドアが開く音がして、すぐさまアオにキスをするのをやめた。

「今来た」
「父さんだ!」

アオは玄関の方に急いでむかった。
俺もアオに続いて玄関に向かった。

「父さん!」
「アオ…」
「お帰りなさい師匠」
「セラ…」
「父さん!ほら!荷物持つからさ、入って!」

アオが師匠の荷物を持ち、師匠が住処に入ってきた。

「セラと父さん、夕食の準備するからさ先に風呂入ってきなよ」
「あぁ、そうする。ほら行くぞセラ」

アオが夕食の支度をする間に師匠と風呂に入る事にした。
風呂と言っても、陸の風呂とは違い温泉に近く、オーシャンでは住処に温泉を持つのは当たり前だ。

「……」
「……」

師匠と風呂入るのはかなり久しぶりだ。
まさか、この歳で師匠と入るとは思わなかった。
しかし、師匠と話す話題が分からないと言うか、久しぶり過ぎで中々話せない。
そんなこんなで、頭も身体も洗い終わって温泉に浸かった。

「ふぅ……久しぶりの温泉だ」
「久しぶりなんですか?」
「まぁな、深海だと温泉は限られてるからな」
「そうなんですか」
「セラ」
「なんです?」
「アオはどうだ?」
「!?」

まさか師匠から聞いてくるとは思わなかった。
父親として、聞いてくるのは当たり前だろうが。

「アオはとても強いメスだと思ってます」
「……」
「師匠とやった修行も取り入れて、修行を共にしてきましたが、師匠を取り戻す目的の為に、辛い修行でも弱音を吐かず逃げもせずに、やりこなして今に至ります」
「そうか…」
「……」
「夜の営みではどうだ?」
「ゴフッ!?」

師匠の直球的な質問に吹き出しそうになった。

「ちょ、師匠!?」
「何故、慌ててる?」
「いや、師匠が直球的な質問したから」
「父親として聞くのは当然だろ?」
「いや…その……」
「まぁ、お前ならアオには酷い扱いはしないだろうが、俺はまだ認めてないからな」

師匠は先に温泉を後にした。
師匠が俺に言った事は、師匠としてよりかは父親としての言葉だろう。
それもそうだ、師匠は1000年以上も生きて、俺は師匠からしたらまだ子どもみたいな感じだ。
そんな奴に、愛娘の番となると不安になるのは仕方ない。

「俺もまだまだだな……」

俺もしばらく温泉に浸かった後に、温泉を後にした。

「セラ!夕食出来てるから、座って!」
「あぁ…いい匂いだな」
「へへ、今日はねチャーハンと餃子、青椒肉絲!沢山作った!」

アオが少し嬉しそうに手を引こうとした瞬間。

グイ

師匠がアオを抱き寄せた。

「と、父さん!?」
「…………」
「…………」
「父さん?セラ?」
「師匠、いくら師匠でもいきなりそうゆう事するのはどうかと」
「父親として当然な事をしたまでだ」
「?????」

師匠は、師匠としての顔ってよりかは…父親としての目付きで俺をみる。
というか、初めて師匠が愛娘溺愛な所を見てしまった。
なんというか…あんまり見たくはなかった。

「えっと…父さん…離してくれない?ご飯食べたいからさ」
「あ、ああ…すまない」
「え?なんでそんな顔するの?」
「いや、ただ」
「アオ、師匠は愛娘が俺と関わるのをみた…」

どぉおん!

「セ、セラ!?ど、どうした!?」
「セラのやつ、相変わらず魔力の制御がなってないな」
「そ、そうなの?」
「……っ」

師匠…恥ずかしいからか、本当の事言おうとした瞬間に、俺を魔法壁で弾き飛ばした。
しかも、オマケに動けなくなる痺れ魔法まで丁寧に仕掛けて…。

「師匠ぉ…」
「ほら、アオが夕食をとりたいらしい…早くお前も座れ」
「んぐ!?」

動けない俺を師匠は、首根っこを掴んでズルズルと引き摺り、椅子に座らせた

「セラ本当に大丈夫か……?」
「なに、心配するなアオ、コイツはちょっとやそっとじゃ死なない」
「そうなのは知ってるけど……」

アオは少し俺を心配そうにみる。
だが、俺は身体が痺れても自力で回復が出来るため、直ぐに治した。

「ほらな」
「すごい…」
「師匠…」
「アオが作った夕食が冷める。食べよう」

師匠は俺の訴えを無視し、夕食を食べ始めた。
アオと師匠は久しぶりの親子揃っての夕食だからか、会話がかなり弾んでる。
俺もアオが楽しんでるのをみて嬉しいはずなのに、何故か気持ちが変な感じがした。

「まただ…」
「どうかしたセラ?」
「いや、大丈夫」
「そっか」

師匠に対してもまさかこんな…嫉妬をしてしまうなんて。
師匠は、俺にとっては父親みたいなもんで生きる全てを教えてくれた。
だけど、アオへの感情が大き過ぎて嫉妬してしまう。
俺も会話に加わりたい…。
複雑な感情がふつふつと出るものの、それを抑えながらチャーハンを食べた。

「美味かった、母さんに似て美味いな」
「へへ、ヒフミ叔母さんから料理とか教えて貰ったんだ」
「そうか、ヒフミからか…」

俺は幼い頃に両親を失って、アオみたいな親から褒められた記憶はもうあるかないかだ。
俺は何故か、2人のやり取りが羨ましいと思ってしまった。

「……」
「セラ?」
「……ん、あ、いや…なんだ?」
「……少し歩こうか?」
「へ?」

アオは何か分かったかのように、俺の手を引こうとする。

「アオ、ダメだ」
「お父さん!さっきからダメダメって!私は子どもじゃない、少し散歩するだけだから!お父さんは絶対に来ないでね!来たら口聞かない!」
「…………」

アオの一喝に師匠は折れたのか、これ以上止めることはなかった。
俺とアオは住処のすぐ近くの丘に行き、そこで2人っきりになった。

「やはり、ここは良い景色だなー!アトランティスが一望できる」
「……」
「なぁ、セラ」
「なんだ?」
「さっき、嫉妬してたでしょ」
「……」
「やっぱり、あと羨ましいと思った?」
「分かってたのか?」
「分かってたというか、私もつい最近までセラみたいに両親がいなくて、両親がいる周りの子達が羨ましかったから、セラの表情みて気付いた」

アオは優しく話しかける。
その時の声のトーンが落ち着いていて、俺の感情を落ち着かせるようだ。
次第に何故か、涙が溢れ出ていた。
その声のせいかは分からない。
俺は気付いたら、アオを両腕で優しく抱きしめていた。

「お前が師匠と話してる様子をみたら、師匠に嫉妬したり羨ましかったり…分からない感情が出てきた。師匠は俺にとって、親みたいな存在でもあった。あの人から褒められるのはほぼなかったけど」
「そっか」
「お前が、師匠と2人で陸に戻るかもしれないと考えたら不安で…分からなくなった」
「そっかそっか」
「また、大切な誰かを失いたくないって…アオも師匠も俺にとっては大切な人なんだ…」

アオが優しく頭を撫でて、宥めてるのがよく分かる。

「私ね、セラに出会えてとても幸せ者だなって感じてる。セラと辛い修行や色々してきたけど、セラが居てくれたからここまでこれた。確かに父さんも大切だけど…1番大切なのはセラだから。セラの両親にはなれないけど、セラが寂しい思いをさせないようにするから」
「アオ…」
「だから、セラ…辛い時はね…甘えてきてもいいから。」
「あぁ…」
「それに、私はセラを置いてどこにも行かない!」

アオの優しさが、海の波の如く俺の不安や嫉妬の感情を消していく。
消し去ったおかげか、俺はアオに打ち明けることにした。

「アオ、俺は…先に謝らないといけない」
「どうしたの急に?」
「いや、この前夢…いや、願いの話をしただろ?」
「あーあれね」
「実を言うと、俺の願いは…一族を殺した男をこの手で殺したいと願ってた」
「……」

アオは真剣に優しく俺の話を聞いてくれた。
そう、俺がアオに隠して事は。
この俺が、このオーシャンで最も希少で誰もがその血を欲する…一族、ラティメリア族の生き残りだということを…。
オーシャンでは魔法が主だが、俺の一族は唯一術が使える数少ない一族で、その中でも頂点に立つくらい強い一族だ。
代々術を使う事により、魔法以上の強さを得ることが出来き、不可能を可能にしてきた。
しかし、その強さは他の一族にとってはなんとしても欲しい力。
己の私利私欲の為に、その強さを求めては争いが絶えなかった。
もちろん、俺の一族も私利私欲の為に術は使わなかった。
しかし、どんなに護っていても1人のオスによって、一族は一夜で滅ぼされた。
滅ぼしたそいつの名は------

『メガロドン』

幼かった俺は、両親に術の全てを託され、両親が目の前で食い殺されるのを隠れて見ていた。
運が良かったからかそいつから見つからずに生き延びた。
しかし、一族を失った俺はメガロドンに復讐心を抱いてた…。
だけど、この世界じゃ術者は忌み嫌われる。
俺もまだ幼かったから、力を抑えるのが出来なくて、人攫いとかによく狙われていた。
そんな時だ、死にそうな所を師匠に助けられた。
あの時の師匠はかっこよかった…。
術とは真反対な魔法なのに、何故か戦う師匠の姿が自分の父親と似ていた。
それから、俺は何度も諦めずに弟子になり、魔法を会得し、復讐と言う願いを叶えさせるためにバトルに参加した…。
本来の力を隠してな…この力を知ってるのは、師匠とポセイドン様だけだ。

「…俺が術を使う時、それはきっとお前を護るために使いたい。最初は復讐が目的だったのが、お前と触れ合って、色々な経験をして…お前の夢や願いを知ってから、復讐じゃなくてお前の傍に居たいと願うようになった」
「そっか、なら大丈夫だな」
「大丈夫とは?」
「今でも復讐心があるなら、1発殴るところだった。だけど、今のセラは復讐心よりも、誰かを大切にしたいと思う心がある」

アオは俺から離れて、優しく頭を撫でながら満面な笑顔を見せた。

「さて、そろそろ帰ろ!父さんがま…」
「アオ、セラ」

俺達を探しに来たのか、師匠が迎えに来た。

「父さん!?…まさか、探しに?よく分かったね」
「お前達を探すのは1分とかからなかったが、まぁ…お前達の話を盗んで聞くのは流石にな」
「師匠…」
「アオ、先に帰ってくれないか?俺はコイツとちょっと話がしたい」
「わ、分かった。あ、父さん。あんまりセラに強く当たらないで」
「分かってる」

アオは師匠に言われ先に住処にに戻っていき、俺と師匠2人だけになった。

「アオの前だったから言わなかったが、お前…あの闘いの時、秘術使ったな?」
「やはり、師匠ならバレますか…」
「他の奴らには分からないが…俺はすぐに分かった。何故だ?今まで使わなかったのを俺に使った?術士一族の血でも騒いだか?」
「アオを護るためです」
「それを言いながらお前は、本気を出さなかったな。お前は魔法と術…両方使えば俺の首を跳ねることも出来ただろう」
「しなかったのは師匠が一番分かると思います」
「それもそうだな…ただ、この先は過酷な戦いになる。いくらお前がアオに過去を知らされたくないからと隠し続けるのにも時間の問題って事を頭に入れとけ」
「その心配はいりません」
「……」

師匠は少しだけ驚いたが、俺の言葉に師匠は理解した。

「アオに話したのか?」
「はい」
「で、どうしたいんだお前は?」
「俺は、復讐心捨てる。これからは、アオの夢が俺の夢でもあり願いになる。だから、俺はもっと強くなりたい…」
「そうか」

師匠は分かるか分からないかの差だが、少しだけ笑った。

「師匠?」
「今のお前なら、アオを任せられる。俺がお前をアオの番として認めてなかったのは、復讐心があったからだ。復讐心からは破滅しか生まれない」
「……師匠は、アオの母親には会いたいとは思わないのですか?」

師匠は少しだけ間をおいて口を開いた。

「……会えるなら会いたいさ。」
「やはり師匠も、アオの母親のことは…」
「愛していた…いや、今でもな。ホタル…アイツは俺にとって全てだった。アイツが居たから、戦士だけではなく色々な事を教えてくれた…。だから、魂の契約に瞳を差し出すには躊躇はなかった。それに、お前と俺はよく似ている。愛する者一筋や不器用な所とかな」
「それって…」
「お前を弟子として拾ったのは、お前が昔の俺に似ていたからだ。あの時はまさか弟子をもつとは思わなかったが、お前は俺と修行する度に強くなった…」
「師匠…」
「弟子として見ていたのが、まさか義理の息子になるとはな…セラ」

師匠は優しく頭を撫でた。
師匠の手は戦士らしい手で、表情もオスらしくかっこよかった。
師匠から、今まで求めていたであろう父親としての行動に俺は次第に涙が溢れてきた。

「師匠…俺は…」
「あんまり泣くな、どう反応したらいいか俺が困る」
「すみません」
「まだ、そうゆう所は子どもだな。それとだ、お前が強くなりたいと言うなら、俺はお前に徹底に教えるが…どうする?」
「俺は…強くなりたい。アオの夢を叶えさせるために」
「よしなら、明日から修行だ」

師匠の修行は、とてつもなく辛くキツく大変な事だと分かってる。
しかし、アオの夢を叶える為ならばそれも乗り越えて行こう。
俺はそう心に固く誓った。
クリオネという生物を知っているだろうか?
クリオネは節足動物門腹足綱裸殻翼足類、ハダカカメガイ科、ハダカカメガイ属に属する貝の総称で、日本ではハダカカメガイとも言われている。
見た目が小さく可愛らしく、体は透明な部分が多く、体の前半に局2ある。
胴体の前部に透明な1対2枚の翼足 があり、翼足を動かして海中遊泳する。
この姿を見た者はクリオネを「流氷の天使」あるいは冷たい海に生息する事から「氷の妖精」と呼び、また英語では sea angel とも呼ぶようになった。
そんな可愛らしいクリオネには、学者以外の者は知らない姿があったのだった。
「今日はクレイオーが闘う日かぁ」
「心配か?」
「セラは心配じゃないの?ほら、クレイオーは他の戦士よりも小さく可愛らしいから…」
「フッ、クレイオーが小さく可愛らしいか…。てっきりお前なら分かってたと思ってたがな」
「分かっていたって……まさか…」

アオは海洋生物学者で、人より数百倍海洋生物の知識は頭にあり、俺が言った言葉にアオは全て察した。

「まさか…あの姿で」
「そうだ」
「結構グロくない?大丈夫なの?」
「大丈夫もなにも普通なことだ、幾ら姿が人間に近くなっても捕食する時は、元の姿と変わらない捕食の仕方で捕食をする」
「まぁ、そうだけど…でもちょっと見てみたい」
「闘い見に行くか?今ならまだ始まる前で間に合う」
「見に行く!見てみたい」

アオと2人で、クリオネの闘いを見る為に会場に向かった。
会場はやはり、今日の闘いを見るべく人で溢れかえっていた。
それもそうだ、なんせ今日の闘いは滅多には見れないような闘いになるのだから。

 俺とアオは会場に着き、見やすい方の席に座り始まるのを待った。

「誰もが近寄る事すらしない海!アークティック。この海は肉体をも凍らせ、住人は数知れず、厳しい環境から血なまぐさい争いが繰り返されていた!この乱をとめるべく、いくもの男達が人々に訴えてきた!しかし、猛者達でさえ乱を止めることは出来なかった!乱を止めアークティックに平和をもたらしたのは1人の女だった!!その姿を見た者達は、皆美しい海の天使といい武器を捨てにひれ伏した!そして、この闘いにも平和をもたらす為に、今!!この地に現れる!!そいつの名はクレイオー!!」

トリトーンの合図と共に、クレイオーは会場に現れた。
アトランティスの民誰もが、奴の姿を見て、天使のように美しいと泣き始める。

「あらあら、そんなに泣かなくてもよろしくてよ?」

「さぁ、平和をもたらす天使に対し、相手となる奴は!陸の伝承にもあり、海には目に見えない怪物がいるといわれてきた。しかし、その怪物は取るに足らないちっぽけな存在でありながら、猛毒で人々を苦しめ、時には死に至らしめるともいわれ、人々も神からも危険視された最恐最毒な戦士!ルキア!!」

そして、クレイオーとは反対側から現れたのは、イルカンジ族のルキア。

「うるさい…」
 
イルカンジ族はクラゲ族の中で、1、2位を争うくらいな猛毒を持つ最恐最毒戦士一族。
奴の毒を食らったらイルカンジ症候群になり、重度の頭痛、腰痛、筋肉痛、胸部、腹痛、吐き気と嘔吐、発汗、不安、高血圧、頻脈、肺水腫など弱い人間ならば1時間以内には死ぬと言われている。

「まさか、イルカンジと戦うなんて…クレイオー大丈夫?」
「大丈夫だ、あいつは…俺達7天の中で唯一不老不死とも言われてる。そう簡単には死なんよ」
「不老不死…?」

アオはクレイオーの闘いを少しだけ、不安を抱えながらも見るようにした。

「まさか、最恐最毒と呼ばれる貴方と闘うなんて…光栄だわ」
「ウチはアンタとは闘いたくはなかったよ、アンタの噂はここまできてるからね、クソサイコパス」
「あらあら、女の子がそんなはしたない言葉使ってはいけませんわ?」
「うるさい!その、うるさい口、人間もろとも塞いでやる!」
「あらあら、せっかちね。せっかちは嫌われるわよ?」
最毒触手(モスト)!!」

ルキアの毒の触手がクレイオーに勢いよく巻きついた。

「あらあら」
「このまま、お前を毒で殺してや…」
暗闇の球体(ブイヨセフェラ)
「!?」

黒の球体が、クレイオーとルキアを一呑みで呑み込んだ。
  
「始まったな…」
「え!?なんか、黒の球体が2人を呑み込んだけど、これって」
「クレイオーは絶対に相手と戦う姿は、とどめを刺す手前までは見せない」
「なんで?」
「……まぁ、アイツの趣味だ」

黒の球体に呑み込まれた2人、外からはその様子を見る事は愚か、内側からの声や音すらも聞こえない。

「お前!」
「そんな怖い顔しなくてよ?ただ、戦争みたいな状態では使えない技を、久しぶりに使えたのだからもっと楽しまなくてはいけませんわ?」
「ゲス野郎…お前を倒せば、これも解除されるのだろう?」
「倒す??それは無理ですわ」
「!?」

ルキアの足を黒い触手が絡み掴んだ。

「くっ、動け…」
「無理ですわ、この空間は私の意志そのもの。私が貴方を解放したいと思わない限り、解放はされない」
「っ……」

クレイオーはルキアの両腕も拘束し、ゆっくりと優しくルキアの頬に触れ、優しく微笑みながら、ゆっくりと手をルキアの胸の方に下ろす。
 
「そんなに、怯えないで?安心して?私は貴方には血を流させたりはせずに、この闘いを終わらせるわ」
「よせ、やめろ!」
「私と一緒に快楽に落ちましょ?」
「い、いやぁぁぁぁぁ!」

2人が球体の中で色々してるなか、会場にはその様子は全く分からず、ただ静けさだけが広がっていた。

「番組は動かないし、球体の中で何かしてるのも分からない…」
「まぁ、分からない方がいい」
「へ?」
「前も言ったが、クレイオーはかなりの性欲の持ち主だ。クリオネ族は今が繁殖期。だからといって、誰もかまわず交尾はしない。しないようにする為にあいつは、あの技を開発したんだ」
「じゃ、あの球体の中で行われているのは」
「クレイオーの性欲発散」
「oh……」

アオは全て察しながらも、クレイオーの性欲の恐ろしさに若干引いてしまった。
無理もない、陸の人間じゃクレイオーみたいな無理やりやる奴は、大体は捕まるからな。
それにだ、クレイオーの番を見たらよくわかる。
疲れて顔がやつれており、誰もが心配するような状態だ。
クレイオーも馬鹿じゃないから、多分今回の闘いで思う存分欲を満たし、暫くは交尾をしないようにする。
じゃないと、番がヤリ過ぎ死にかねないからな。

「あ、セラ!球体が!」
「終わったみたいだな…」

球体が消え、呑み込まれた2人が現れた。
クレイオーは満足した表情はするものの、ルキアに関しては、言うまでもなく昇天している。

「やはり、たまには欲を満たすのはいい事ね!さぁ、仕上げにいきましょうか」

クレイオーをゆっくりと、自身の頭を開き始めた。

「ふふ、可愛いかったわ…クラゲ族でも珍しい両性持ちだったから、ついつい遊びすぎた。それにお腹も空いたから…」

ゆっくりと開いた頭からは、触手が現れルキアを一気に丸呑みし、ゆっくりと味わうようにし、最後はルキアの跡形もなくなっていた。

「ごちそうさま」

「な、なんと!クレイオーまさかの、会場には血一滴すら落とさず闘いを終わらせてしまった!」

クレイオーは満足顔し、周りの観客達はクレイオーの恐ろしい一面を見たからか、怖さのあまりに会場は静まり返っていた。
 
「やはり、見た目の可愛いさからアレがでるからな…天使か悪魔か分からない」
「まぁ、この世界は弱肉強食。喰われる者も現れる。今回は、クレイオーが喰い勝った」
「まぁ、確かにそうだけど」

そう、クレイオーは見た目が美しく海の天使と言われ、乱を止めたのではなく、クレイオーの恐ろしい姿をみた強者達が、あまりにも恐ろしいと恐怖し膝まづいて、乱が止まったのだった。
その日、会場に居た観客達はクレイオーは天使ではなく悪魔として語り継ぐのであろう。

 そして、クレイオーは恐怖を残し、クレイオーとの闘いは無事に幕が降り、終わった。
 
シャチ。
鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)のマイルカ科に分類され、哺乳類のなかでは人間に次いで広範囲に生息し、日本を含む世界中の海に分布している生き物。
学名のOrcinus orca(オルキヌスオルカ)は、ラテン語で『冥界からの魔物』という意味がある。
英語はKiller Whale(キラーホエール)クジラ殺し』といい、自分より遥かに大きい獲物を狩ることができる能力から名付けられた。
ちなみに和名のシャチは、魚の胴に虎の頭を持つ空想上の生物、鯱が由来。
シャチは海の王者と言われるほど知能は高く、人懐っこく人間には人気。
更に群れ成して暮らしており、群れのリーダーは主にメス。
そんなメスがリーダーになる世界で、あるオスシャチがリーダーになった。
リーダーの名前はオルカ・シェーンチ。

彼の母親はシャチの世界では頂点に立つほどの実力者だった。
しかし、なぜオスであるオルカが群れの…いや、一族の長になれたのか、それは100年以上前になる。

「オルカ!ラキエル!」
「母上!兄上、母上が帰ってきた!」

弟ラキエルは国の入口で、母親のシルキーの姿を見つけ、嬉しそうに兄オルカに報告した。
 
「本当か!?」
「しかも、大きな鯨肉担いでる!」
「マジか!じゃあ行こう!」
「ちょ、まってよ兄上!」

オルカとラキエルは、待ちに待った母親の元へ急いで向かった。

「母上!」
「オルカ!」

 オルカとラキエルは嬉しさから母親に抱きついた。
 幼い2人にとっては、唯一の母親の帰還は嬉しい事であり、母親も愛しい息子に会える事は何よりの幸せ。

「母上、よくご無事で!」
「母上、今回は盗賊?罪人?何を倒したんだ?」
「はいはい、ちゃんと屋敷に着いたら話すから、ほら貴方達も荷物運ぶの手伝って」
「はい!」

オルカの故郷はオーシャンでは珍しく、一族同士で出来た小さな国だった。

「今日は皆で鯨の肉で宴だ!」
「兄上!狩ったのは母上達だから、母上の許しがなければ宴は…」
「いいわ、今日は久しぶりに戻ったもの。皆で宴をしましょう」
「やったあ!鯨の肉!鯨の肉!余った肉は皆に分けよ!!」
 
小さな国だからこそ、人々は位など関係なく助け合いながら暮らしていた。
シルキーを含め、戦士になった一族は定期的に隣国や隣村に出向き、村や国に害する者や害獣などを狩って、その賞金で国を支えていた。
そしてシャチ族は、戦いに特化した一族であり、10歳になると戦士になるまで国一丸となって育てられる。
オルカもラキエルも国の大人達によって鍛え上げられてきた。

しかし、そんな国の体制が気に食わない一族がいた。
シルキーからしたら、従兄弟になるトレイが率いるオフショア一族。
トレイは、昔ながらの弱肉強食…強気者が頂点に立ち、弱き者は見捨てるという考えがあり、族長会議には必ずしもシルキーとぶつかっては敗れていた。
しかし、従兄弟の傲慢さは止まらず、仕舞いにはシルキーに奇襲を仕掛け、同族の争いに発展させた。

「皆、私が時間を稼ぐ。オルカとラキエル…生きている仲間を連れて安息地まで逃げろ!あそこまでさえ逃げたら、奴らは追って来れない!」
「分かりましたシルキー様」

シルキーの部下は幼いオルカとラキエルを素早く抱えた。
  
「母上!!母上!!離せ!!離せよ!」
「母上!」
「ダメです、オルカ様!ラキエル様!」
「ダメなんかじゃない!母上が、アイツらに殺される!俺たちが行かなきゃ…」
「オルカ!!」
「!?」
「貴方達は私達の未来、絶対に死んではいけない!貴方達さえ生きれば一族は助かり、国はまた再建できる。貴方達2人は…生まれながら、お父さん譲りの心優しい子…だから絶対に弱き者に歯を向けてはいけない!…オルカ、本当の強き者は弱き者を守り導く者こそ、真の強き者!貴方達は絶対に強さを間違ってはいけない!!さぁ!行って!早く!」
「母上!!」

オルカとラキエルは仲間に連れられ、燃え落ち消えていく国を後にした。
 
「オルカ、ラキエル…一緒に居れなくてごめんなさい。私は貴方達をこの世界の誰よりも愛している」
 
そして、幼きオルカは弟と仲間の支えがあり、一族のリーダーになった。
そんなオルカは、神の試練を合格し、一族のリーダー兼7天の忍辱の戦士としてオーシャンバトルに参加するのであった。

アトランティスの食堂街にて。

俺はアオに買い出し頼まれて、夕飯の買い出し終わって帰るって時に、たまたまオルカに会った。

「セラァァァ!!」
「!?」

あの滅多に泣く事がない男が、急に弱々しく泣きつかれたので、近くにあったタツノコ喫茶店に入った。

「なぁ、聞いてくれよセラ」
「だからどうした」
「マツリのやつ…交尾(やら)せてくれないんだよ」
「それは、お前ががっつきすぎてか?」
「いや、俺はがっついたりはしないさ。なんだよお前、俺はそんな風に見えるか?」
「いや、哺乳類族はなんか繁殖期とかオスが大変だと聞いてな」
「まぁ、そうだけど…。いやいやそうじゃなくて!俺とマツリは…あんまり同調交尾してないんだよ。まだ、50%」
「は?お前それは流石に…だって、お前明日戦うんだろ?」

オルカはうつ伏せになりなよなよしい様子で俺をみる。

「そうなんだよ…どーしよ…」
「シャチ族最強とも言われた一族のリーダーが、メスで女々しくなるとは…一族の奴らには見せれないな。ましては相手になるラキエルには」
「………」

そう、オルカの相手は実の弟ラキエル。
オルカの弟ラキエルは、オルカと互いの考えの食い違いにより、ラキエルは謀反を起こし罪人となった。しかし、オルカにとってはたった1人の家族。
オルカの実力と願いのおかげで、ラキエルは深海に幽閉された。
そんなラキエルが今回戦士として、バトルに参加する事になった。
ラキエルの実力は、俺でさえも知っている。
兄である戦闘力が長けているオルカに対して、ラキエルは戦闘力はそこそこあるものの、頭はかなりよくて謀反犯す前は、采配士として活躍していた。

「まぁ、そんなうだうだしていても時間の無駄だぞ?」 
「はぁ…本当にどうしたらいいんだよ…」
「そんなに悩むなら本人に聞けばいいだろ」
「そんな、本人に聞くとか…」
「そう簡単にはいかないよねー」
「うわっ!?」

アオの声が会話を急に止めた。

「なに、驚いてるのオルカ」
「いや、お前が急に割り込んできたからだろ」
「いやぁ、セラに買い出し頼んでいたけど遅くて、探してみればこんな所に居た」
「すまなかった、オルカの相談を聞いてたんだ」
「へー…ねぇ、オルカ」
「なんだ?」
「セラが言ったように、本人に聞いてみたら?それが早いよ。それに、あの子ならちゃんと聞いてあげそうだし」

アオはオルカの背中を押すかのようにアドバイスをする。
オルカは腹を括ったのか、マツリに聞いてみるといいその場を後にした。

「オルカ上手くいくといいね」
「だといいが」

シャチ族の繁殖本能は凄まじく、メスを傷つけかねいと聞く。
まぁ、オルカの事だから、メスを酷い扱いはしないと思うが。

「オルカのこと心配してるんだ」
「まぁな」

オルカは俺より歳上だが、歳関係なく俺にも、弟みたいに親しく接してくれる奴だ。
本当に俺を、実の弟かのように接したせいか、若干だが、兄が居たらこんな感じだろうかと思ってしまった。

「さぁ、私等も行こ!」
「ああ…あ、アイツお金置いてってない」
「まぁまぁ、飲み物だけだし今日は奢ってやろう」

俺達は勘定をすませ、喫茶店をあとにした。
そして、住処に戻り買った物とかを片付けていく。

「そう言えば、師匠は?朝からいなかったが…」
「たまには2人の時間も必要だろ?って言って、出かけてるよ。夜には帰ってくるみたいだけど」
「そっか…なぁアオ」

俺は片付けをしてるアオを、後ろから優しく抱きしめる。

「何?」
「その…久しぶりに」

久しぶりにアオと交尾たい。
あれから、師匠と修行の日々が続いたせいか、アオに癒されたい欲が込み上げてくる。
俺より小さくて柔らかくて、大好きなアオの匂いは安心する。
 
「いいよ」
「本当?」

後ろからアオの豊かな胸を護服の上から優しく揉む。

「んっ…ひゃ、そう言いながら、既に胸触ってる」
「たまには…いきなりでもどうかなって」
「んっ…」

服の上からでも分かる。
アオが胸だけで、こんな感じ乳首を勃たせてるのを。
可愛いらしい…後ろから揉むのは初めてだが、後ろからでもアオが感じているのがよくわかる。
次第に護服のしたから手をゆっくりいれ、直接胸を揉む。

「んっ、ひゃあ…あ」
「久しぶりだからか?胸だけで凄く可愛い声がでてる」
「あ、ん…だって気持ちいいから」
「気持ちいいんだ?」

素直に答えるアオ…可愛い。
首筋に顔を埋め、アオの匂いを堪能する。
いい匂いだ…魔力だと分かっていても、俺だけの甘くて匂い。
さっきまで半勃ちだった俺のが、欲によって硬くなっていくのが分かる。
アオの匂いを堪能しながら、ゆっくりと互いのスボンを下ろし、下着越しに俺のをアオのに押し当て、ゆっくりと動かす。

「ん…あっ」
「固くなってるの分かるか?」
「分かる…凄い…」

アオをゆっくりと向かい合うようにし、抱き合いながら深く熱いキスをする。
舌を交わらせながら、ゆっくりと下着を脱がせる。
俺もアオに下着を脱がされ、欲でそそり勃った俺のが露になった。
硬く我慢汁が出てるのがよくわかる。

「アオ…」
「いいよ…セラ」

再びキスをしながら、俺はアオを持ち上げて、下から俺のをゆっくりとアオの中に入れた。

「んっ…ひゃ」
「っ…下から入れられるのハマったか?つ…凄い締めてる」
「ひやぁ、だって気持ちいい…大きくて硬くて…んにゃああ」

アオのお尻を掴み、俺はキスをしながら腰を動かす。
アオの体重ならまだ軽く持ち上げられるし、持ち上げられるからこんな立ったまま交尾ることができる。
腰を動かす度にアオの子宮に俺のが当たってるのがよく分かる。
何回も子宮に当たれば、アオは軽くイキながら強く抱きしめたりと可愛いらしくたまらない姿をみせた。
そんな、熱く愛し合ってる最中に…。

『セラ』
『…おい、嘘だろオルカ』

オルカから神通がきた。

『頼みがある』
『まて、今…』
『分かってる』
『は?』
『だって、声が聞こえるからな。交尾てるんだろ?』
『分かってるなら、何故今かけてきた』
『タイミングがよかった、俺も今マツリと交尾てる最中だ』

そう言われれば、微かにマツリのみだらな声が聞こえてくる。

『マツリは2人っきりでやるのが恥ずかしいんだ、だから声だけでもいいから…お前達の声聞かせてくれないか?』
『……どうゆう趣味だお前は』
『頼む!今回だけ!な?その後はちゃんと解決策考えるから』
『はぁー…分かった、今回だけだ』
『感謝する!終わったあと、美味い店で奢ってやる!』

明日のオルカの大事な闘いがあると分かってるから、俺はアオに秘密にすると言う条件で了承した。
神通越しに聞こえてくるオルカとマツリのみだらな声。
そして、アオも感じまくって可愛い声を出し、抱きしめキスをする。
熱い、もっとアオを感じていたい!アオ…アオ!

「セラ…セラんっ…好きにゃ…」
「俺もだ…」

気持ちが高ぶり、腰を早く動かしながらキスをし、舌を交わらせる。
向こうのオルカ側も徐々に激しくなってるのが分かる。

「オルカ…私、んっおかしくなりそう、すごく熱くて…」
「んっ…おかしくなってもいい、もっと見せてくれ…マツリ。俺は嬉しいんだ…はぁはぁ…マツリは俺を嫌ってなくて…好きだから恥ずかしくて交尾れないという理由が……嬉しいくて、んっ…可愛い。もっと交尾りたい…」
「うん、んっ…私もオルカとやりたい…次は2人っきりで交尾れる」

互いに激しくなっていくに連れて、アオとマツリは可愛いらしく甘くとろけていき、最後には激しく果ててしまった。
 
『はぁはぁ…ありがとうセラ』
『……同調率は上がったのか?』
『あぁ、100%だ』
『それは良かったな』
『これで闘える…今夜、さっき言った美味い店連れて行くから、師匠さんも連れて俺のところに来いよ』
『分かった…』

そう言って、オルカからの神通が途切れた。
そして、久しぶりに激しくイッたせいか、疲れて眠ってしまってるアオに下着と服を着させ、ベットに寝かせた。
顔にかかっている髪の毛を優しく指でどかし、アオの寝顔を堪能する。

「幸せそうで可愛い…」
  
寝てる姿も可愛いらしく、もっと眺めていたい。
それに、髪もあの時よりも伸びて、雰囲気が大人な感じがでてる…大人だけども…。
そんな、アオのちょっとした変化を楽しむのもいいものだと俺は思ったのであった。