「須藤、そっち持てる?」

 大学の教室から、今日jyに頼まれた荷物を、古賀君と運ぶことになった。教室で席が近くなることが多く、今日も、”そこの2人で運んで”とご指名があった。

「大丈夫、持てる。なんかまた使われちゃったね、教授に」

 今日は金曜日。戦士絵との約束の日。お昼が終わったら、早めに病院に行きたかった。

「俺は、ラッキーだったけど」

「古賀君、また教授の心証良くなるよね。何かと指名率高くない?」

「…そっち?須藤、相変わらずだな」

 少しあきれたトーンで言われる。古賀君は、足を止めると私を見下ろした。

「俺が、いつでも2人で手伝いますよ、って言ってるの、教授に。で、わざわざ須藤のそばに座ってるの。それってどう思う?」

 数秒、考える。

「私の心証も、良くしてくれている」

 古賀君は、肩で大げさにため息をついた。

「つまんない答え。ハズレ。進歩ないな、お前は」

 古賀君は、私の倍程の荷物を器用に持ちながら、視線をよこした。

「今日、どっか行くの」

「…なんで?」

 今日もまた、普段気ないようなブラウスを着ていた。もし先生と一緒に居ても子供ぽくならないように。

「なんか、いつもと雰囲気違うから。金曜日なんかあるの?先週も、そんな感じだったろ」

「なに、チェックしてるの」

 わらってごまかそうと、見上げた私の数センチ先に、古賀君の端正な顔が近づく。今年ブレイクしたと評判の俳優に似た、綺麗な切れ長の目が、少し心配そうに揺らいだ。

 …え?
 気の合う男友達の一人、の筈、古賀君は。数人のグループで、食事に行ったり勉強したり。

 古賀君は、その後は何も言わずに荷物を持ち直すと、また歩き始めた。

 …気の合う友達のはず、古賀君は。