「喧嘩両成敗じゃ。全く、主等がここで大喧嘩するとどうなると思うている。この大うつけ共め」
「「も、申し訳ありませぬ」」
二人がゆっくりと叩頭したので、わらわは「全く」ともう一度呟いた。
「仲良うしろとは言わんが、もう喧嘩するでないぞ。双方、どちらの言い分も自分の心中に言い聞かせる様にしろ」
強く二人を窘めると、二人から弱々しく「御意」と発せられた。そう言われては仕方ないと言わんばかりの声音で、まだまだ溝が深いなと感じる。
まぁ、今はこれで良しとするか。いつまでも説教とはいかぬからの。
「では女房達を呼べ、わらわは着替えるのでな。もうこの格好は疲れた。双方は下がれ、皆にはわらわの支度が整い次第出立すると伝えておけ」
「「ハッ」」
今度は恭順で、力強い返答をすると、二人は足並み揃えて部屋を出て行った。そして入れ替わる様に女房達が入り、わらわの支度を整えた。
そうしていつもの水干姿になると、ようやく待ち焦がれていた馬に乗り、皆を引き連れて美張に帰還した。
それから一日かけて美張に戻る事が出来ると、早速父上に何があったかの報告をしに参った。
「と。言う次第にございまする、父上」
わらわが全ての事を話し終えると、父上は淡々と「そうか」と答えただけだった。
「こうなるであろうと、予測されていらしたのですか?」
「うむ、武田は猛将と言うよりも智将であるからな。双方を納得させる様で、実は一番自分に利がある。武田は、その様に事を運ぶのが上手いからのぅ。じゃから、そう言う事になるであろうと思うておったのだ」
「そうでしたか、流石は父上」
わらわが感服すると、父上は「じゃが、やはり懸念はあるのぅ」と渋面を作った。わらわはその唸りに、コクリと小さく頷く。
「しかしながら、千和よ。我らに残された選択肢は一つだけだろうの」
父上は腕を組みながら、二つの淀みない黒の瞳で、わらわをしっかりと見据えた。
「美張を、民を守る為には、我らは常に最善を取らねばなるまい。それは分かっておるな、千和よ」
「勿論にございまする」
わらわが間髪入れずに、力強く答えと、父上は満足げに頷いた。
「それが分かっておるのなら良い。では、武田に使者を遣わせて文を送るのじゃ。久遠と武田の同盟を成立させるぞ」
こうして、我が美張の久遠と甲斐の武田とで、軍事同盟を成立させたのだった。
「「も、申し訳ありませぬ」」
二人がゆっくりと叩頭したので、わらわは「全く」ともう一度呟いた。
「仲良うしろとは言わんが、もう喧嘩するでないぞ。双方、どちらの言い分も自分の心中に言い聞かせる様にしろ」
強く二人を窘めると、二人から弱々しく「御意」と発せられた。そう言われては仕方ないと言わんばかりの声音で、まだまだ溝が深いなと感じる。
まぁ、今はこれで良しとするか。いつまでも説教とはいかぬからの。
「では女房達を呼べ、わらわは着替えるのでな。もうこの格好は疲れた。双方は下がれ、皆にはわらわの支度が整い次第出立すると伝えておけ」
「「ハッ」」
今度は恭順で、力強い返答をすると、二人は足並み揃えて部屋を出て行った。そして入れ替わる様に女房達が入り、わらわの支度を整えた。
そうしていつもの水干姿になると、ようやく待ち焦がれていた馬に乗り、皆を引き連れて美張に帰還した。
それから一日かけて美張に戻る事が出来ると、早速父上に何があったかの報告をしに参った。
「と。言う次第にございまする、父上」
わらわが全ての事を話し終えると、父上は淡々と「そうか」と答えただけだった。
「こうなるであろうと、予測されていらしたのですか?」
「うむ、武田は猛将と言うよりも智将であるからな。双方を納得させる様で、実は一番自分に利がある。武田は、その様に事を運ぶのが上手いからのぅ。じゃから、そう言う事になるであろうと思うておったのだ」
「そうでしたか、流石は父上」
わらわが感服すると、父上は「じゃが、やはり懸念はあるのぅ」と渋面を作った。わらわはその唸りに、コクリと小さく頷く。
「しかしながら、千和よ。我らに残された選択肢は一つだけだろうの」
父上は腕を組みながら、二つの淀みない黒の瞳で、わらわをしっかりと見据えた。
「美張を、民を守る為には、我らは常に最善を取らねばなるまい。それは分かっておるな、千和よ」
「勿論にございまする」
わらわが間髪入れずに、力強く答えと、父上は満足げに頷いた。
「それが分かっておるのなら良い。では、武田に使者を遣わせて文を送るのじゃ。久遠と武田の同盟を成立させるぞ」
こうして、我が美張の久遠と甲斐の武田とで、軍事同盟を成立させたのだった。