切ない顔をしたヨータが、私の手をぎゅうっと握りしめ、
「オレ、こんなだからプロポーズなんて許されないかなって思ったりもすんだけど・・」
と、自信のない声でボソボソとつぶやき瞳を揺らす。
「だけどそれでもオレは菜緒と結婚したい。お願い、結婚して。オレちゃんと稼ぐから」
じっと私の目をみつめるその視線の奥には、ハッキリと不安の色が滲んで見えた。

「ヨータ・・・」

ヨータにこんな顔をさせているのは自分なのかと思うとショックで。
衝撃を受けて固まった私の反応は、しかし、悪いことにヨータを更に不安にさせた。

悲しげに眉を下げてヨータがうつむく。
「ーーーやっぱダメか・・オレにはなあんにも、ないもんね・・・」
慌てた私はヨータの首に腕をまわして必死にしがみついた。
「ちがうよ、ごめん。そーじゃない。私、あの時すんごく酔っぱらってたからーーー」

飲んでクダをまく迷惑なオッサンと同じ。
それっぽく、ちょっとエラそーに説教かましちゃっただけだ。
そりゃあもちろん、お金はないよりあったほうがいいし、生活だって安定してたほうがいい。結婚するなら尚更。

ーーーだけどね? と、覇気のないヨータの横顔をみつめる。

それが全てってわけじゃないんだよ、ヨータ。