ヨータの作品をたっぷりと堪能し終え、「さーて、お茶でも飲もうかな」とキッチンへ向かおうとした私をヨータが引き止める。

「菜緒、まって」

腕をひかれて彼の正面に座り直すと、ズボンのポケットをゴソゴソと探っていたヨータが小さな何かを取り出した。
へへへとはにかみながら、彼が私の手のひらにのっけてくれたのは、陶器でできた白くて小さなまあるいわっか。

「こ、これってもしかして・・」
「そう、指輪。菜緒、オレと結婚して」

手のひらのくぼみの中で艶めく指輪をつまみあげると、ヨータは私の手のひらをひっくり返し、薬指にするりとそれを突っ込んだ。

「うわあ、ぴったり・・だけど、どうしてサイズがわかったの?」
びっくりしてその顔を見上げると、ヨータがゴソゴソとまたポケットの中を探りはじめた。
「・・お手本をひとつ、借りてたんだよね」
ありがと、って手のひらに転がされたのは、失くしたと思っていた私のお気に入りのリングだった。
「ああっっ、これ!! ヨータが持ってたの!?」
「うん。ゴメンネ」