日が暮れてから、私は小ぶりの土鍋を抱えて海に出た。
アパートのすぐ前の松原をつっきればあっという間に海なのだ。

土鍋の蓋にあいた小さな穴からホカホカと美味しそうな湯気が立ち昇る。
太い幹の間をさくさくと歩いて松林を抜け、暗い夜の海を一望できる砂浜の端っこにヨイショっと腰をおろした。

肩にかけてきた大きなバッグからレジャーシート、紙皿、割り箸を取り出してお一人様の宴を丁寧にセッティングしてゆく。紙皿のふちに和辛子をしぼることだって忘れない。
そして最後はキンキンに冷えたビールを手にとった。

「さてと。イタダキマース」

プシッとプルタブに爪をたて、まずはビールをひとくち。

「・・っっあーーー、最高!!」

疲れが吹き飛ぶウマさである。
引っ越しの準備は滞りなく終了し、あとはもう食って寝て、朝を待つのみ。