ぴんぽーん、と。

インターフォンの音に顔を上げた私は、貼りかけていたガムテを段ボール箱の上に放って玄関へと急いだ。
「はーい」と扉を開けた瞬間、蝉の鳴き声が倍増し、強烈な熱気がむわんと顔面を直撃する。

「う、うお・・スゴっっ・・」

今日はまた、とんでもなく暑い。業者さんも汗だくである。
ここが3階であることに引け目を感じつつも、私は玄関に積み上げられた段ボール箱をしっかりと指さした。

「この8箱、お願いします」

私が依頼した段ボール箱はプロの手によって手際よく集荷され、この半年間ずうっと持て余していたヨータの・・・元カレの痕跡は私の目の前からしごくアッサリと消えてなくなった。
実家に送りつけてやったのだ。着払いで。

ふうっと大きく息をついてエアコンの効いた室内に戻り、やりかけの梱包作業を再開する。
引っ越しは明日。
今日はこのアパートですごす最後の日になる。