………


「……」

 僕はウサギを戻すのは一旦後回しにして、部室にある冊子やファイルを読むことにした。過去に生物・飼育部がどんな活動をしてきて、どんな生き物を育ててきたのか。挿絵や写真付きのファイルでまとまっている。
 ウサギを雌雄一緒に飼っていると一瞬で交尾するので過剰繁殖してしまうとか、ハムスターの寿命は2-3年と短くその一生を1日も欠かさず細かく記載したりとか、動物の生態に関する活動がまとめられている。野良犬や猫を保護して里親を探す団体と協力してボランティア活動を行うなど、学外の活動にも力を入れていた様子。
 かなり勢力的に活動していたようだが、部員数は徐々に減少していき、昨年度3年生が卒業してしまって0人となり解散してしまった。
 ここまで生き物に対して真摯に向き合う人達と出会ってみたかったなと思う。僕もあと1年早く生まれていれば、彼らと共に活動できたのかと思うと言い表しようのない悔しさがあった。

「……」

 古びたファイルを指で撫でる。
 もしかしたらここにいた人たちになら、僕の考え方や夢を笑わずに聞いてくれるんじゃないだろうか?きっとこの世にはどんな生物もいて、それを見つけてみたいと思っていると…先生のように優しく聞いてくれるのでは?と。
 そしたら今みたいに遠巻きに見られることもなくなって…

「キュー!」
「…っ!」

 甲高い鳴き声で我に返る。声の方に目を向けるとウサギがキュッキュッと鳴いていた。

「あ、あぁ。ごめんね!その飼育箱じゃちょっと狭いよね!」

 そうだ、先生から頼まれていたんだ。早く裏庭のウサギ小屋に戻してあげないと。

「…ピィ」

 窓際付近の机に置かれた飼育箱に近づくと、今度は別の生き物の鳴き声が聞こえた。