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 私が決意した日から早1週間ほど。未だに赤翼くんにはきちんと謝れておらず、絶妙に気まずい雰囲気のまま。
 カリカリと筆記音だけが響く教室で、ちらりと目線だけ隣に向ける。カンニングを疑われないように慎重に。

「……」

 赤翼くんは真剣に試験問題を解いていた。
 あれから1週間経って試験期間になった。今はちょうど最後の試験時間である。
 試験期間中もピィちゃんの飛行練習のため、何度か部室に顔を出していた。
 それが彼女たちの怒りを買ったのか、私に対する嫌がらせは日に日に激しさを増していった。
 教科書が濡れているのは序の口で、登校時に上履きが隠されていたり、物が少しの時間なくなっていたり。最近では机の中にピィちゃんのご飯用の虫が入っている時もあった。
 しかし私は特に反応を示さず、黙ってやりすごした。早めに登校するなど、人目につかないよういろいろ対処する。思っていた反応が得られず、向こうも躍起になっているようだった。
 とはいえこっちもそんな生活は疲弊する。おかげで寝不足になるし、勉強もろくにできないしで散々だ。
 でも不思研とピィちゃんを守るためと思えば苦ではなかった。

 キーンコーンカーンコーン

「はい、やめ!」

 試験終了のチャイムと同時に先生の号令が教室に響く。その言葉で我に返った。

「後ろの人は解答用紙を集めて持ってきてくれ」

 勉学は苦手じゃない。むしろこういうところで成績を取らないと、体育を休んでる分印象が悪い。
 私は1番後ろの席だったので、埋まりきった解答用紙を持って前の人たちのを集めていく。

「……」

 いつも嫌がらせをしてくる羽折さんの分を回収しようとした。

「ふっ」

 その女の子が嫌な笑いを浮かべたかと思った次の瞬間、私の足をかけるように足を廊下に突き出してきた。

「っ!」

 こけたらまずい!怪我したら火の海になる!
 咄嗟に私は歩む足を引く。
 だめ、間に合わない!
 そう思った矢先、突き出していた彼女の足が引っ込んだ。私は思わず前につんのめる。

「ぷっ…」

 小馬鹿にしたような笑い声が私の耳に届いた。

「くっ」

 こんなことして何が楽しいのか。本当に人間てくだらないなと、そう思ってしまった。