「ピィちゃん!」
「大丈夫!?」

 3人で声をかけながらすぐに駆け寄る。十鳥先生も窓際からピィちゃんへ駆け寄った。

「んー…」
「ピ…」

 十鳥先生が触診するようにピィちゃんを触る。

「うん、ちょっと落ちちゃっただけみたい」
「よかったぁ」
「怪我がなくてよかったね」
「ほんとに…」

 落ちた時は生きた心地がしなかったが、大事でなくて何よりだ。
 不死鳥の子は私とは違って、怪我を再生させる力はない。万が一怪我をしたら治るまでまた飛べなくなってしまう。

「でもやっぱりちょっと早かったかな。まだ飛べるほど回復はしてないみたい」
「そうみたいですね」
「ほんの少し翼を強打させちゃったかもだから練習は間を空けてにしようか」
「やる時はみんなでですか?」
「うん、そうだね。今みたいにやっていこう。慣れたら裏庭でやるのもありだね」

 十鳥先生はやっぱり以前の知識があるのだろう。やり方や段取り、ピィちゃんの状態まで的確に把握しているようだった。

「まぁでも今日のところは籠から飛び出せたってだけでも進歩だね!…じゃあ片付け始めようか。生駒くんと赤翼くんは机戻してー」
「えー、重いんですけど…」
「2人とも男の子でしょー?」

 渋々と言った様子で生駒くんと赤翼くんは机を移動させ始める。クッションとダンボールを片しながら私はそんな2人をじっと見つめた。

「翔!ちゃんと持ってよ!」
「いや、持ってますけど?」
「嘘だよ!こっち重いもん!」

 やっぱりここがなくなるのは嫌だ。こんなに楽しくて一生懸命な部活を私に対するくだらない嫌がらせで消してしまうのは嫌だ。
 そして、この場から私がいなくなるのも嫌だ。

「……」

 私が耐えなくちゃ。あんな嫌がらせに負けない強い心を持たなくちゃダメだ。
 ピィちゃんはちゃんと飛ぼうとした。赤翼くんもピィちゃんを守ろうと必死に部活作りをしてくれた。生駒くんだってそんな私たちを見て部室に入るって決断してくれた。
 もう2人に迷惑はかけられない。今度は私が頑張る番だ。私がみんなを守らなくちゃ。私は密かにそう決心した。