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「長いこと引き止めてごめんなさいね。雛子のお友達と話せるのが嬉しくって」
「いえ、僕の方こそ長居してすみません」
夕日が差し込む玄関で遠慮がちな笑顔を向ける。あれから楽しくて随分とたくさん話し込んでしまった。
お母さんの身に起きた昔あった話や拾った不死鳥のピィちゃんの話。不死鳥の文献をいつか見せて欲しいと頼んだり、最近の不知火さんの学校事情など。放送室をジャックした件では少し驚きながらも嬉しそうにしていた。不知火さんのことをすごく心配してたんだなと思った。
「では僕はこれで」
「あ、1つ言い忘れてたわ!」
お辞儀をして玄関の扉に手をかけると、不知火さんのお母さんが引き止めてくる。
「親バカに聞こえるかもしれないけれど、雛子が自分という人間のことを嫌いにならないように見守ってくれる?」
「……はい。それくらい、お安い御用です」
少し不思議な発言だった。
「…ありがとう」
自分という人間を嫌いにならないように…か。それは大切なことだ。
僕も周りから遠巻きに見られて自分を嫌いになったこともあるけれど、今自分の趣味を好きだと思えて生きている。
友達として、不知火さんのことを見守っていけたらなと思う。
「気をつけて帰ってね」
その発言にもう一度ペコリと頭を下げて、僕は夕焼け空の下に出た。