「半人半鳥なの。でも厳密に言えば半分も血は入ってない。だいたい──」
「ち、ちょっと待って!」
「…なに?」

 頭のキャパシティがオーバーしかけていたのでいったん彼女の話を遮る。今日だけで2つも生物についての驚き情報だ。どんな生き物もいるとは言ったが、さすがにこう連続してくると頭がショートしかける。

「えっと…不知火さんは鳥と人間のハーフなの?」
「…混血という意味では」

 彼女が嘘を言っているようには見えないが、あまりに突飛過ぎる。

「信じられない?…なら、さっき私の身に起きたことはどう思うの?」
「それは…」

 彼女の身に起きた出来事。体から炎が噴き出し、傷が癒えていった。人体では決してありえない現象。それこそ彼女が不死鳥の血を持っていないと説明がつかない。

「でも、人と鳥って交配できないでしょ?」
「できない。それにはこの子の生態も関わってるの」

 不知火さんが雛鳥をしなやかな指先で優しく撫でる。雛鳥はキュウっと心地よさそうに鳴いた。
 彼女が静かにこちらを見つめる。彼女の眼にもう言い淀みの迷いはない。頭はまだ混乱していたが、僕は黙って頷きを返した。

「これはあくまで私の家に伝わる書物にあった話」

 頷きには返さず、代わりに彼女が語り始めた。

「不死鳥は死期が近づくと体を燃やして灰にする。その灰から時間をかけて次の命を生み出す。そうやって身一つで命を繋いできたらしい」

 『燃やす』や『灰』という言葉は生物として聞き馴染みはないが、そうやって命を繋ぐ生物は多々存在する。ただそれは菌類やクラゲなどごく小さい生物に限ってだ。

「1つの個体で1つの命を繋ぐ。ただそれでも、怪我や病気、捕食によって命を失うことはあった」

 どうやら生死に関する命の在り方はこの世の理を脱しないらしい。実際、不老不死と呼ばれるベニクラゲも同様に命を落とすことはある。